歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



御覧いただきたいのはここ!


歌舞伎俳優全員で新しい出発の時を

 新しい歌舞伎座が、いよいよ4月2日に開場します。藤十郎さんは、日本俳優協会会長という俳優を束ねる立場でいらっしゃいますが、第五期となる今度の歌舞伎座には、どんな夢を描いていらっしゃいますか。
 「歌舞伎というものを、日本だけではなく、世界に認めてもらい、世界に向けて発信したいと考えています。歌舞伎座がその拠点となってくれたらと思います。歌舞伎座の開場に巡り合える役者は、そういないでしょう。4月、5月、6月にほかの劇場に出ていて、歌舞伎座に出演しない俳優ももちろんいます。ですが、たとえ出演はしていなくとも、4月に新出発するという気持ちは全員がもっていると思います」

 やはり歌舞伎座は特別、ということなのですね。
 「日本の歌舞伎座。日本を代表する劇場です。だから口には出さなくとも、一人ひとりが燃えている感じがしますよ。それぐらいの熱意がないとだめだし、そう思わせる大きな魅力のある劇場です。こういう時期に居合せるのは俳優として幸運ですが、ただ喜んでばかりはいられません。各人が責任をもってきちんとやらなければいけないということです」

おめでたい舞踊を華やかに

 「柿葺落四月大歌舞伎」では第一部の序幕『壽祝歌舞伎華彩(ことぶきいわうかぶきのいろどり) 鶴寿千歳』で鶴を舞われます。昭和3(1928)年11月に行われた昭和天皇の即位の大礼を記念した岡鬼太郎作の筝曲舞踊で、初演は十五世市村羽左衛門の雄鶴、六世尾上菊五郎の雌鶴でした。
 「“あなたに最初に出ていただきます”と松竹の製作から言われました。それはありがたいと思いました。嬉しがりと言われるかもしれませんが、滅多にないことですし、第一歩は大事です。そこに出会える有難さを噛みしめています。歌舞伎が世界に踏み出す第一歩とも考えております」

 今回の上演は、出演者が多くなるそうですね。
 「はい。当初は私が雌鶴、市川團十郎さんが雄鶴の予定でした。“新しい劇場で一緒にやりましょうね”と團十郎さんとお話をしていたのですが、残念なことに不可能になってしまいました」
 「そこで鶴の精は、私が一人で踊り、新しく孫の(中村)壱太郎の世代の俳優も出したらどうだろうかと、振付の藤間宗家(勘祖)にアイディアを出しました。市川染五郎さんも中村魁春さんも変更なく出られます。いずれ歌舞伎座で主力となるであろう若い世代にも出てもらいたい。寿が長く続くようにという、祝福の意味を込めたおめでたい舞踊ですから、大勢が登場する華やかなものにしたらどうだろうと思いました」


 賑やかで華々しい門出です。
 「また、壱太郎の世代は人数が多いんです。あるとき、楽屋に私がおりますと“おはようございます”と若い方が挨拶に来られた。しばらくするとまた“おはようございます”といらっしゃいました。あれっと思い、“さっき、あの子来たんじゃないの?”と尋ねると、“弟さんです”…。だから3、4人ではなく、10人という大人数が出るものにしようと考えたんです」

ようこそ歌舞伎へ

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