歌舞伎いろは

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もっと知りたい!藤十郎さんのこと


毎日、歩く、当り前の努力の積み重ね

坂田藤十郎さんをもっと知りたい!
坂田藤十郎
四代目 坂田藤十郎
(さかた とうじゅうろう)

生まれ
昭和6年12月31日、京都府生まれ。

家族
二代目中村鴈治郎の長男。息子は中村翫雀、中村扇雀。中村壱太郎、中村虎之介は孫に当たる。

初舞台
昭和16年10月大阪・角座『嫗山姥』金時、『寺子屋』小太郎で、二代目中村扇雀を襲名し、初舞台。

襲名
平成2年11月歌舞伎座『廓文章』藤屋伊左衛門、『鏡獅子』小姓弥生後に獅子の精、『心中天網島』紙屋治兵衛ほかで三代目中村鴈治郎を襲名。同17年12月南座『夕霧名残の正月』藤屋伊左衛門、『曽根崎心中』天満屋お初、『本朝廿四孝』八重垣姫ほかで四代目坂田藤十郎を襲名。

受賞
昭和28年毎日演劇賞、同55年度芸術選奨文部大臣賞、同60年度日本藝術院賞、平成2年紫綬褒章、同6年重要無形文化財保持者各個認定(人間国宝)、日本藝術院会員、同8年読売演劇大賞最優秀男優賞。同15年文化功労者、同19年NHK放送文化賞、朝日舞台芸術賞。同20年高松宮記念世界文化賞、同21年文化勲章ほか受賞、受章多数。

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 みずみずしい舞台ぶりが印象的ですが、心がけていらっしゃることはおありですか。
 「声が出なくなったり、立ち座りもどっこいしょ、ではいけないと思います。81歳の人間が全力を尽くしはするが、年齢をお客様には微塵も感じさせない。やらせていただく限りは、そうしたいと思っています」

 実際、そのとおりです。
 「『伽羅先代萩』の千松もね、藤十郎襲名公演のとき(平成18年1月歌舞伎座)は孫の虎之介でしたが、今は、こっちが千松をさせてもらわなければいけないくらいに大きくなりました。無理をしないとは言っても、年齢的に無理をしないと政岡はできない。でも、“無理をしているように見えない無理”でないといけません。そこが大事です」

 体調維持のために、続けていらっしゃることがあればお教えください。
 「お医者様にうかがったら、腰を大事にするには、歩くことがいいそうです。家内(扇千景元参議院議長)が付いて歩いてくれます。国会議員は俳優以上に座っていることが多い。当時から歩くことを勧められていたそうです。毎日、1時間ぐらいは歩きます。舞台で大きなお役をさせていただくのですから、それぐらいの努力をするのは当たり前だと思うんですよ」

 歩くことが、みずみずしい舞台の源だったのですね。
 「歩いていると、“本当に歩いているんですか”とびっくりされることがありますが、足があるのだから、歩くのは当たり前です。80歳を過ぎると、そんなことを言われるんですかねえ」

 では、歌舞伎座で今後は、どんな役を演じたいと思っていらっしゃいますか。
 「上方和事を演じたいですね。『河庄(心中天網島)』の治兵衛を勤めたい。ただ、治兵衛の場合は兄の孫右衛門役との“息”と“間”が難しい。私が出なくても子どもたちがやってもいいですしね。頑張ってやらなければいけない時期だと思います」

ようこそ歌舞伎へ

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