歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっと知りたい!幸四郎さんのこと


歌舞伎味を残したい

松本幸四郎さんをもっと知りたい!
松本幸四郎
九代目 松本幸四郎
(まつもと こうしろう)

生まれ
昭和17年8月19日、東京都生まれ。

家族
初代松本白鸚(八代目松本幸四郎)の長男。息子は七代目市川染五郎。四代目松本金太郎は孫にあたる。弟は二代目中村吉右衛門。

初舞台
昭和21年5月東京劇場『助六由縁江戸桜』外郎売伜(ういろううりせがれ)昭吉で二代目松本金太郎を名のり初舞台。

襲名
昭和24年9月東京劇場『勧進帳』太刀持、『ひらかな盛衰記 逆櫓』遠見樋口ほかで、六代目市川染五郎を襲名。同56年10・11月歌舞伎座『勧進帳』武蔵坊弁慶、『寺子屋』舎人松王丸、『熊谷陣屋』熊谷次郎直実、『助六』花川戸助六実は曽我五郎ほかで、九代目松本幸四郎を襲名。

受賞
昭和40、42年テアトロン賞。54年度日本藝術院賞。平成5年サー・ジョン・ギールグッド賞、読売演劇大賞最優秀男優賞。10年眞山青果賞大賞、菊田一夫演劇賞大賞。15年第10回坪内逍遙大賞。17年紫綬褒章。21年日本藝術院会員。24年文化功労者、25年第30回早稲田大学芸術功労者ほか、受賞、受章多数。

幸四郎さんを読みたい!

 4月に新しい歌舞伎座が開場しました。感想をお聞かせください。
 「綺麗で立派でね、素晴らしいです。お客様にも見やすくなったと好評です。あとは、我々がそこにふさわしい歌舞伎をお見せする以外にないですね。舞台から見た客席の印象は前の歌舞伎座とほとんど変わりません。舞台の寸法も同じで、前の歌舞伎座に戻ったような印象でした。楽屋も至れりつくせりですよ」

 4月、5月、6月の3カ月間は「柿葺落大歌舞伎」に連続出演し、大役を演じられます。4月は長男の市川染五郎さん、孫の松本金太郎さんと親子三代が揃われました。
 「金太郎が『盛綱陣屋』の小四郎に出演して三代が揃い、ありがたいことです。父の白鸚、母の正子がちゃんと生きてくれたお蔭で、子や孫がこういう思いをさせてもらっています。自分も父となり、祖父となり、いずれはご先祖様になるんだから(笑)、ちゃんとしなければと思います」
 「金太郎にも小四郎への駄目出し(注意)が毎日、染五郎からあったようです。子どもですから一遍に10も20も言うとだめなので、毎日1つ、2つ直すようにして、千穐楽まで無事に勤められるようにと思っています」


 先ほども、これからの歌舞伎の可能性、といったお話が出ましたが、現在の歌舞伎について、ほかにお考えのことはおありですか。
 「『寺子屋』のように人間の根源に迫り、心を揺り動かすような演劇としての歌舞伎があり、その一方で<歌舞伎十八番>の『毛抜』や『暫』に代表される荒唐無稽な芝居もあります。もしできるなら、僕はそういう大らかな芝居に洒落っ気を持って演じていきたい」
 「たとえば、『暫』の鯰を播磨屋の祖父(初世吉右衛門)が演じると本当に洒落ていた。遊び心がありました。今は、そんな役でも型をなぞってつまらなくなっています。演劇としての歌舞伎、シュールであって洒落っ気のある歌舞伎、この2つの歌舞伎をなんとか残してゆきたいですね」


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