歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっともっと楽しんでいただくために


歌舞伎座新開場がきっかけとなって

 『四谷怪談』は以前から、なさりたい演目だったのでしょうか。
 「いえ、祖父(七世尾上梅幸)も父(尾上菊五郎)も手掛けておりませんし、菊五郎劇団でも上演していなかったので、あまり意識することはありませんでした。得意とされていた(十八世中村)勘三郎のおにいさんが、“やるときは教えるよ”とおっしゃってくださっていたのですが、正直機会があるとは思っていませんでした」

 では、突然でびっくりなさった…。
 「実は、サントリー美術館で2月に<歌舞伎座新開場記念展 歌舞伎 ―江戸の芝居小屋―>展が開催されましたとき、そこで拝見した浮世絵に三代目尾上菊五郎舞台姿があり、四谷様の与茂七の絵がありました。三代目は『四谷怪談』を初演し、当り役として9回も演じています。それからです、意識し出したのは…。そこに、松竹からお岩様をというお話があり、やっていいんですか、と思いました」

 やはりご縁は深かったのですね。
 「武家女房のお岩様と下男の小仏小平、それに武士の佐藤与茂七。まったく異なる3役を9回も演じた三代目菊五郎は、天才だったと思うんですよね。今回は三代目菊五郎への挑戦という気持ちで、入魂の芝居をしたいです」

六世梅幸の型を受継いでいく

歌舞伎座新開場 七月花形歌舞伎

平成25年7月4日(木)~
28日(日)
公演情報
夜の部
通し狂言『東海道四谷怪談』

お岩/佐藤与茂七/小仏小平 菊之助
直助権兵衛 松 緑
奥田庄三郎 亀三郎
お袖 梅 枝
お梅 右 近
四谷左門 錦 吾
按摩宅悦 市 蔵
後家お弓 萬次郎
伊藤喜兵衛 團 蔵
民谷伊右衛門 染五郎

 どなたに教わられるのでしょう。
 「(坂東)玉三郎のおにいさんにお聞きします。おにいさんは、(十七世)勘三郎のおじさまに教わり、勘三郎のおじさまは(六世)梅幸のお弟子の梅朝さんに教わられたとうかがっています。梅幸の型がそうやって伝えられている、伝統の重さも感じます」
 「玉三郎のおにいさんは、役の性根と型の両方を教えてくださいます。(六世中村)歌右衛門のおじさま、勘三郎のおにいさんなど先輩の皆さんのお岩様の映像を改めて拝見しているのですが、魅力を感じます」


 四世鶴屋南北作品ではほかに『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』の小万もなさっています(平成23年6月シアターコクーン)。南北のどんなところに魅力をお感じですか。
 「河竹黙阿弥は勧善懲悪、例えて言うなら、大川に風が吹き抜けるような涼しさを感じます。南北は、沼地に生温かい風が吹くような、どろっとした感じがします。その生々しさに演じる上でのヒントがあるのでないかと。また、人物の抱える闇が深いような気がします」

ようこそ歌舞伎へ

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