歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっと知りたい!菊之助さんのこと


大役初挑戦のわくわく感と緊張感

尾上菊之助さんをもっと知りたい!
尾上菊之助
五代目 尾上菊之助
(おのえ きくのすけ)

生まれ
昭和52年8月1日、東京都生まれ。

家族
七代目尾上菊五郎の長男。祖父は七代目尾上梅幸。母は女優の富司純子、姉は女優の寺島しのぶ。

初舞台
昭和59年2月歌舞伎座『絵本牛若丸』牛若丸で六代目尾上丑之助を名のり初舞台。

襲名
平成8年5月歌舞伎座『弁天娘女男白浪』弁天小僧菊之助、『鏡獅子』小姓弥生・獅子の精で五代目尾上菊之助を襲名。

受賞
平成8年浅草芸能大賞新人賞。同14年度松尾芸能賞新人賞。同17年読売演劇大賞杉村春子賞、朝日舞台芸術賞寺山修司賞。同17年度芸術選奨文部科学大臣新人賞ほか受賞多数。

菊之助さんが観たい!

 『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の八ツ橋、『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』のお三輪など、大役への初挑戦が続いています。この『四谷怪談』に続き、9月には歌舞伎座で『新薄雪物語』の梅の方もなさいます。
 「9月は大変ですね。先輩方でさえ難しいとおっしゃる芝居ですから、怖いです。いつも初役には、新しい自分を見つけるわくわく感と緊張感が同居します」

 どこにわくわく感を覚えられますか。
 「人物の面白さを再発見するところでしょうか。たとえば6月の歌舞伎座で演じた『壽曽我対面』の十郎の初役のときもそうでした。荒事の五郎と江戸和事の十郎がいますが、荒事はエネルギーがほとばしり、舞台全体に熱風が吹くような感じがします。対して兄の十郎は何なのかと考えていました。ただ五郎を抑えるだけに出ているのか。正直わからないところがありました」

 演じてみたからこそ感じるところがあるのですね。
 「回数を重ねていくうちに、十郎は五郎よりも熱いものをもっている男でないといけないし、それを和事で覆いかぶせ、全体を包んでいるのではないか、冷静な包容力をもっているけれど、熱い男として演じなければならないということがわかるようになりました」
 「歌舞伎の型物でも、面白さを発見できるかどうかは自分次第だと思います。型を守るのも大事ですが、それだけではない、性根をつかむことが重要だと感じています」


伊右衛門役でなくてよかった?

 歌舞伎座が新開場しました。どんな感想をお持ちでしょうか。
 「前の劇場と寸分たがわぬところがある一方で、きれいになったし、空間が広がったような感じもします。舞台に立っていると前の歌舞伎座にいるような気がする…、それが本当にありがたい。目の付けどころも変わっていないし、客席の雰囲気も同じなので、安心感があります」

 最後に、プライベートでは2月にご結婚されました。新婚生活はいかがですか。
 「生活パターンは、そんなに変わっていません。妻が私のわがままに合わせてくれているので、ありがたいです」

 菊之助さんは役にのめり込んで、生活に影響するほうなのですか。
 「役に入っていることが多いです。役を引きずっていることもあると思います。だから、今回、演じる役が伊右衛門ではなくてよかったです(笑)」

ようこそ歌舞伎へ

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