歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっともっと楽しんでいただくために


初日が開いてからのお楽しみに

 勘三郎さんの伊之助で、印象に残られるのはどんなことですか。
 「突然ご自分で思いついたせりふに、受けてしまっているときがありました。フグ鍋に混ぜた毒で死んだはずの伊之助に絡みつかれたおきわが、気絶する場面で、勘三郎のおにいさんが、“ちょっとあんた肥えたんちゃう”と、私のお腹を叩いて大笑いしだした。それを見て、気絶しているはずの私がちょっと笑ってしまった。そしたら“なんや、あんた気絶しているのに笑っているのか”と言いながら、また一人で笑っておられました」

 伊之助がフグ毒にあたったふりをして、悶絶する場面の勘三郎さんの演技、柱に巻きついたり、おかしみがたっぷりでした。
 「私も一つ考えていることがありますが、まだ言えません。初日が開いてからのお楽しみです。丸本物(義太夫狂言)や松羽目物(能狂言を歌舞伎化した作品)では、演技を変えられませんが、歌舞伎の面白いのは、こういう新作演目では自在に変化できることです」

 歌舞伎の幅広さ、奥深さが垣間見えますね。
 「4月に歌舞伎座が新開場し、今まで歌舞伎をご覧になっていない方も多くおいでになるようになった。初めて歌舞伎をご覧になる方は、きっと『狐狸狐狸ばなし』で、“これも歌舞伎なの!?”とおっしゃると思うんです。それが狙いです。絶対に笑っていただけるし、楽しい」
 「おまけにこの後に『棒しばり』があります。きちっとした舞踊を三津五郎さんと勘九郎さんという、踊りに優れた方が勤められる。いい狂言立てが揃い、第一部から第三部まで、“歌舞伎を見に来てよかったね”と思っていただけるような演目が並んでいます。夏休みなので、お子さんにも見ていただきたいですね」


いつかは大阪版『狐狸狐狸ばなし』を

歌舞伎座新開場柿葺落 八月納涼歌舞伎

平成25年8月2日(金)~24日(土)
公演情報
第三部
江戸みやげ
『狐狸狐狸ばなし』

伊之助 扇 雀
おきわ 七之助
おそめ 亀 蔵
福造 巳之助
又市 勘九郎
重善 橋之助

 役づくりの際に、ご留意されるのはどんな点ですか。
 「役の中にあるものを探し出して役をつくります。これは、古典の演目を勤めるときも同じです。役に自分から近づいていく。そこに自分の感覚が入り込むことは、多分ありません」

 この作品は、元の脚本は大阪を舞台に描かれています。扇雀さんは上方歌舞伎の継承者でもいらっしゃいます。大阪版をやってみたいというお考えはおありですか。
 「ええ、ぜひやってみたいですね。大阪で、私のおきわ、兄貴(翫雀)の伊之助、それに笑福亭鶴瓶さんの重善でできたら面白いだろうなと思います。あるいは、いずれ、私が伊之助で、うちの子(虎之介)や甥の壱太郎がおきわをやってもいいと思います」

 7月が大阪松竹座で宇野信夫作『柳影澤螢火』、そして8月が歌舞伎座でこの北條作品と、昭和を代表する劇作家の新作歌舞伎が続きます。
 「現代の作家にもこういう作品が書けるんです。1時間半ぐらいの優れた作品を書いてくださる作家に、もっと出てきて欲しいと思います」

ようこそ歌舞伎へ

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