歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっともっと楽しんでいただくために


面白くてわかりやすい「道成寺物」として

 『男女道成寺』の特徴、魅力はどこにあると思われますか。
 「男と女が同じ格好で出てきて、最終的には共に蛇体となる。男性の場合は白拍子から狂言師、そして清姫の亡霊と2段階に化けるわけです。ほかの道成寺物も、もちろん魅力的ですが、『男女道成寺』は、初心者にもわかりやすくて面白いと思います。もちろん曲も名曲です。この作品をご覧いただいてから、『娘道成寺』を見ていただくと、また楽しいのではと思います」

 孝太郎さんが初演されたのが平成8(1996)年7月の大阪中座。希望されていた役だそうですね。
 「父(仁左衛門)と玉三郎のおにいさんの舞台を何度も拝見し、“いいなあ、やりたいなあ”と憧れておりました。『娘道成寺』は、女方ならほとんどが、一度は踊ってみたいと思う曲で、諸先輩の『娘道成寺』の所化に出ているときにそう思っておりました」
 「お着替えのこしらえの早い先輩を拝見して、“どうしてこんなに早くできるのか”と思ったり、“これぐらいの間でできたらいいなあ”と考えたり、そんなことを思いながら座っておりました。頭の中はシミュレーションばかりでした。“あそこは誰々が素敵だった”というイメージが自分の中にあり、『男女道成寺』を踊る度に、その姿を追い求めているところがあります」


相手に合わせて踊り方を変える難しさ

新橋演舞場 九月大歌舞伎

平成25年9月1日(日)~
25日(水)
公演情報
昼の部
『男女道成寺』

白拍子桜子
実は狂言師左近
橋之助
所化 宗之助
竹 松
廣太郎
廣 松
白拍子花子 孝太郎

 初演から再演を重ねられて、何を感じられましたか。
 「初演は(市川)染五郎さんの左近でした。ひたすら大変で、大きな出し物と実感いたしました。でも、(中村)福助のおにいさんは、“これでも半分だからね。娘道成寺はこんなものじゃないよ”とおっしゃいます。『娘道成寺』と『鏡獅子』が女方の勤める大曲の双璧かと思いますが、どちらが大変か、俳優さんによって分かれます。いつか両方挑戦したい。夢が叶うように頑張ります」

 お父様と踊られたときは、息子さん(片岡千之助)さんも舞台に出ていらっしゃいましたね。
 「2度目に花子を勤めたときが(平成15年7月大阪松竹座)、父の左近でした。息子は初お目見で所化に出ておりました。私は公演中に39度の高熱を出し、解熱剤も効かず、踊っていても始めからから夢の世界にいるようで、桜や飾り物のすべてが美しく見えたことを憶えています」

 2人で踊るときに留意されるのはどんなところでしょう。
 「4回目の今回も含め、全部旦那様が違いました。女方は芝居でも踊りでも立役に合せるのが基本です。間の取り方など、同じ曲でも、それぞれに踊り方が違いました。今回は『娘道成寺』を大切にされてきた成駒屋の橋之助のおにいさんなので、ぐいぐい引っ張って、いろいろ教えていただけるのではないかと楽しみにしています」
 「道成寺と名のつくものを女方としてやらせていただけるのは、本当に光栄なことなので、ここで一所懸命勉強させていただきたいと思います」


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