歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



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自分のニンを大事に勤める

 動きやせりふのあまり多くない、義経という役をなさるうえで、どんなことを大切になさっていますか。
 「義経の持つ愁いを出さなければと思います。まず歌舞伎の役は何でもそうですが、ニンを要求されます。ニンにはまるということがスタートでしょう。僕も、まだできているとは思いませんが、同じように動いていても、若い頃の佇まいと最近の佇まいは、写真を見ただけでも違うのではと思います」

 これまでにご覧になられた『義経千本桜』の舞台で、心に残るものはおありですか。
 「やはり、父の典侍の局の印象が強く残っています。義経に対する気持ちが、せりふの端々、動きの端々から伝わってきました。親をあまりほめ過ぎないほうがいいかもしれませんが、それが芸の深さなのかと思います。先輩方の義経は皆さん素敵でしたが、おじさん方と自分では個性が違います。強めになさる方、柔らか目になさる方もいます。自分のニンを大事に勤めております」

源平の世界の代表的な人物

歌舞伎座新開場柿葺落 芸術祭十月大歌舞伎

平成25年10月1日(火)~
25日(金)
公演情報

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「川連法眼館」平成19年3月歌舞伎座
(C)松竹株式会社
通し狂言『義経千本桜』
昼の部 二幕目 渡海屋 大物浦

渡海屋銀平実は新中納言知盛 吉右衛門
女房お柳実は典侍の局 芝 雀
相模五郎 又五郎
入江丹蔵 錦之助
亀井六郎 歌 昇
片岡八郎 種之助
伊勢三郎 米 吉
駿河次郎 隼 人
武蔵坊弁慶 歌 六
源義経 梅 玉

夜の部 大詰 川連法眼館
佐藤忠信/忠信実は源九郎狐 菊五郎
静御前 時 蔵
駿河次郎 團 蔵
亀井六郎 権十郎
飛鳥 秀 調
川連法眼 彦三郎
源義経 梅 玉

 『義経千本桜』という作品の魅力はどこにあると思われますか。
 「同じ三大名作の一つでも、『仮名手本忠臣蔵』のように、ストーリーが通して完結している話ではありません。ですが、一幕だけを取り上げても、立派に成立している作品です。言葉にしても、曲にしても、とてもよく書かれていますし、先輩方がつくってきた歌舞伎の型もこれ以上ないぐらいに洗練されて固まっています。そういう意味で、歌舞伎を代表する作品の一つだと思います」
 「たとえば、『すし屋』だけご覧になり、義経が登場しないのに、何で『義経千本桜』なんだと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、あの場面にしても、源平の世界。源平の世界の代表的な人物が、義経なんですよね」


 後輩の俳優に、義経というお役をお教えになる際、留意される点はどこでしょう。
 「雰囲気さえ出れば大丈夫、という以外にないですね。ただ、先ほどお話ししたように、典侍の局とのやりとりだけは気持ちを込めて言ってくださいと申し上げます。テクニック的にお教えすることは何もありません。こういう系統の役は、テクニックよりも性根を大事にするようにお話しています。“性根さえ持っていればそれなりに見えますよ”と申し上げるしかないですね」

 ですが、それがかえって難しいところでは。
 「僕も初演のころは、それができなかった。それでも、義経として舞台に立つうちに、段々に本物らしくなってくる。稽古を拝見し、体の向きをこうしたほうが色気が出るとか、せりふをもっとゆっくりというか、リズムをつくって言ったほうがいい、というようなことは申し上げますが、皆さんプロですから、扮装して舞台に立てばそれなりに見えます」

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