歌舞伎いろは

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歌舞伎座 「壽初春大歌舞伎」  『仮名手本忠臣蔵』「九段目」 知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 坂田藤十郎

戸無瀬には若さが残っていないといけない

 ──「九段目」は、戸無瀬をはじめとして本蔵、由良之助、お石、力弥、小浪、登場するすべての役が魅力的です。

 本当にうまく書けています。「九段目」は、歌舞伎の基本になる役の集まりのように思うんですよ。

 ──そのなか、お石と戸無瀬の応酬はみどころの一つですね。

 戸無瀬は後妻で、本蔵とは年齢が離れている。小浪と一緒に喜んだりするのも年齢が若いからです。だから、どこかに若さが残っていないといけない。たぶん戸無瀬より、お石のほうが年上でしょう。だから、せりふの間の取り方も違います。お石のほうがゆったりとしている。戸無瀬は、かっとしますが、お石は戸無瀬と同じように興奮しないほうがいい。

 私より後輩の方がお石をなさることが多いのですが、そういうお話をさせていただきます。戸無瀬が興奮してしゃべり、お石がそれをぱっと外す面白さがある。お石を勤めたことはありませんが、難しいだろうなあと思います。あまり出過ぎると喧嘩しているように見えますし、お石も肚の中では泣いているんです。

歌舞伎座 「壽初春大歌舞伎」

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平成26年1月2日(木)~26日(日)

公演情報

平成24年3月新橋演舞場(C)松竹株式会社

夜の部
『仮名手本忠臣蔵』「九段目」山科閑居

戸無瀬 坂田 藤十郎
大星由良之助 中村 吉右衛門
お石 中村 魁 春
小浪 中村 扇 雀
大星力弥 中村 梅 玉
加古川本蔵 松本 幸四郎

与えられた以上はできるだけのことを

 ──仮名手本忠臣蔵』の主要な7役を早替りで、お一人で演じられたこともおありでしたね(平成4年2月、大阪の国立文楽劇場初演)。師直、由良之助、勘平、定九郎、与市兵衛、平右衛門、そして戸無瀬を勤められました。

 「九段目」では、戸無瀬と由良之助を早替りしました。戸無瀬で引っ込むとすぐに、「やあまて力弥、早まるな」と由良之助で出てくる。『忠臣蔵』で早替りをするのは無謀だとおっしゃる方もいらっしゃいますが、関西歌舞伎らしいサービス精神なんですよ。戸無瀬をすると、そのときのことを思い出します。今思うと、ひと役でも大変なのに、よくそんなにやったと、この間も大笑いしました。

 「九段目」は全体の3分の2ぐらいは戸無瀬が中心になっての芝居です。だから初演したときはうれしかったけれど、大変だとも思いました。歌舞伎の女方として、こういう役をさせてもらえるのは、本当にありがたい。歌舞伎座で政岡と戸無瀬という女方の大きい役を二つさせていただける…。与えられた以上は、お答えできるだけのことをやらないといけませんね。

 ──「九段目」で初めてお勤めになられたのが小浪でした(昭和28年2月御園座)。文楽の八世竹本綱大夫さんに教わられたとうかがっています。

 「九段目」は、ものすごく深く書いてあるので、文楽でも難しい。綱大夫お師匠さんに、小浪を教えていただくときに、戸無瀬についてもあわせてうかがいました。今回もお師匠さんをはじめとする文楽の方たちの音源を聞いて、勉強しなおして臨みます。

 そして、いつもより早く楽屋入りをして支度を済ませ、揚幕の向こうで気持ちを落ち着かせて、出を待ちたいと思います。

ようこそ歌舞伎へ

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