歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



明治座 「明治座 五月花形歌舞伎」  『伊達の十役』 染五郎さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 市川染五郎

いつかできたらと思っていた芝居

 ――昼の部の『邯鄲枕物語 艪清の夢(かんたんまくらものがたり ろせいのゆめ)』は、久々の上演ですね。

 (九世澤村)宗十郎のおじ様主催の「宗十郎の会」(平成5年8月国立劇場)でなさったときに拝見し、『忠臣蔵』「五段目」や『吉田屋』のパロディーもあり、楽しくて面白く、いつかこんなお芝居ができたらと思っておりました。「宗十郎の会」のときの演出が本当にうまくできていました。おじ様の衣裳が残っているので使わせていただき、おじ様のような古風で大らかな歌舞伎の復活を目標にいたします。

 ――宗十郎さんの、おっとりとした舞台が思い出されます。

 『彦市ばなし』(同9年6月歌舞伎座)の殿様をなさっていた宗十郎のおじ様が休演されたときに、僕が代わったことがあります。

 おじ様のお芝居が好きでした。役を教えていただいたときに、「君は客席に座っていたら、背もたれから体が離れて前のめりになるような芝居をする。それは違うよ。席にゆったりと背を預けて見るのが歌舞伎なんだ」とおっしゃった。自分の考えにはなかったことなので、びっくりしました。確かにおじ様は、そういう芝居をなさっていた。それが歌舞伎のおおらかさにつながるのかと思いました。

 ――昼の部のもうひと役の『釣女』の太郎冠者も初役です。

 ずっと舞台に出ずっぱりですが、やるしかない、頑張りどころだと思います。歌六さん、秀太郎さん、竹三郎さんに入っていただけるのも大きいです。共演する歌昇君、壱太郎君たち若手が、このひと月でぐっと伸びてくれたらうれしいですね。

 ――ご長男の金太郎さんは4月の歌舞伎座では『髪結新三』の丁稚に出演されていました。

 『魚屋宗五郎』の丁稚もさせていただきましたが(同25年2月日生劇場)、白塗りや隈取をした役のほうが好きなようです。『鏡獅子』の胡蝶のときは(同年10月国立劇場)、舞台が終わってから、毎日ご褒美代わりに僕が隈を描いてやっていました。隈取の本を見て、「今日はこれ」と自分で選ぶ。描いてから押隈を取りました。僕のほうは隈取の勉強になりましたね。

 金太郎が特に好きなのは『船弁慶』と『大物浦』の平知盛の隈です。実は金太郎の初舞台では、化粧をするときにいつも、先ほどお話した『伊達の十役』の舞台裏のビデオを見せていました。じっと見入っているので化粧がしやすかったんです。金太郎は今、『伊達の十役』のポスターの写真をスマホの待ち受け画面にしています。

市川染五郎 高麗屋!

市川染五郎さんをもっと知りたい!

七代目 市川染五郎(いちかわ そめごろう)

生まれ 昭和48年1月8日、東京生まれ。
家族 父は九代目松本幸四郎、息子は四代目松本金太郎。
初舞台 昭和54年3月歌舞伎座『侠客春雨傘(きょうかくはるさめがさ)』松本金太郎で三代目松本金太郎を名のる。
襲名 昭和56年10月歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵 七段目』大星力弥、11月『助六曲輪江戸桜』福山かつぎで七代目市川染五郎を襲名。舞踊では平成7年4月より松本流家元・三代目松本錦升を襲名。
この一年の舞台

平成25年

  • 5月 「明治座 五月花形歌舞伎」(明治座) 『与話情浮名横櫛』与三郎/『将軍江戸を去る』徳川慶喜
  • 7月 「七月花形歌舞伎」(歌舞伎座) 『加賀見山再岩藤』多賀大領、安田帯刀/『東海道四谷怪談』民谷伊右衛門
  • 9月 「九月大歌舞伎」(歌舞伎座) 『新薄雪物語』園部兵衛/『陰陽師 滝夜叉姫』安倍晴明
  • 10月 平成25年10月歌舞伎公演(国立劇場) 『一谷嫩軍記』熊谷小次郎直家、無官太夫敦盛/『春興鏡獅子』小姓弥生、獅子の精
  • 12月 「十二月大歌舞伎 仮名手本忠臣蔵」(歌舞伎座) 『仮名手本忠臣蔵』「大序」「三段目」桃井若狭之助/「四段目」石堂右馬之丞/「五段目」「六段目」早野勘平

平成26年

  • 1月 「壽初春大歌舞伎」(歌舞伎座) 『鴛鴦襖恋睦 おしどり』河津三郎、雄鴛鴦の精/『東慶寺花だより』信次郎
  • 2月 「二月花形歌舞伎」(歌舞伎座) 『心謎解色糸』お祭左七、半時九郎兵衛/『青砥稿花紅彩画』日本駄右衛門
  • 4月 「第三十回記念 四国こんぴら歌舞伎大芝居」(金丸座<旧金毘羅大芝居>) 『菅原伝授手習鑑』「車引」「寺子屋」舎人松王丸/『女殺油地獄』河内屋与兵衛

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