歌舞伎いろは

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旧金毘羅大芝居(金丸座)「四国こんぴら歌舞伎大芝居」『芦屋道満大内鑑』知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 中村時蔵

金丸座の舞台機構をフルに使って

 ――狐である葛の葉と夫の保名、また葛の葉と息子の童子。親子と夫婦の情愛と別れも描かれます。

 親子の情がことに大事だと思います。童子は後の陰陽師、安倍晴明です。あの子が名高い晴明になるんだと、お客様にもわかっていただけるといいなと思います。葛の葉は、自分がお腹を痛めて産んだ子ではありますが、本物の葛の葉姫が現れてしまった以上は、もう姿を消さなければならない。保名に預けて、去っていきます。そのために歌を書き残すわけです。

 ――こんぴら歌舞伎の金丸座には、よく合った風情の作品だと思います。前回と変える部分はありますか。

 せっかくですから金丸座にある、人力で動かす廻り舞台を使います。前回は葛の葉が保名に子どもを渡した後に、下手(しもて)の笹の中に入りましたが、今回は花道のスッポンに入ります。金丸座のスッポンは浅いんですよ。かがんでいないと体が出てしまう。そこに自分でぽんと飛び込もうかと思います。

 葛の葉の「道行」は本当はスッポンから登場しますが、笠も被っているので、入るときはスッポンですが、出るのは舞台のセリからにしようかと思います。カラミを使い、トンボも返ってもらって金丸座の装置をフル稼働します。金丸座の雰囲気でやることが面白いと思うんですよ。

旧金毘羅大芝居(金丸座)「四国こんぴら歌舞伎大芝居」

平成27年4月11日(土)?26日(日)

公演情報

芦屋道満大内鑑あしやどうまんおおうちかがみ
葛の葉

女房葛の葉/葛の葉姫 中村 時 蔵
安倍保名 尾上 松 也

生々しくしないのが歌舞伎の演技

 ――第一部では『伊勢音頭』の万野をなさいます。こちらは昨年10月に名古屋の顔見世興行(日本特殊陶業市民会館)で初演され、今回が2度目です。

 成駒屋のおじ様(歌右衛門)をはじめ、これまでにいろいろな方の万野を拝見してきましたが、僕が初めてお紺を勤めたときに(昭和62年6月大阪 中座)、なさっていた嵐徳三郎さんのイメージが強く残っています。

 成駒屋のおじ様の万野はご立派で、仲居というより女将さんのようでした。徳三郎さんの万野は関西弁でベラベラしゃべって、本当にそこの水で育った、お金が好きで堪らない仲居、徳三郎さんを参考に役づくりを楽しみました。

 ――貢とのやりとりもみどころになります。

 万野がいじめないと貢もやりにくいと思いますが、強くなり過ぎて男っぽくなってもいけない。歌舞伎の演技は、あまり生々しくなってはいけないんです。

 たとえば、斬られたときに本当に声を上げたりするのはよくありません。そうすると、どんどん芝居に入っていく…。ことに若いうちはそうなりがちです。僕もそういうところはありますし、うちの息子たちにもよく注意します。そこを通り抜け、段々にいらないところがそぎ落とされ、歌舞伎らしくなっていくのだと思いますね。

ようこそ歌舞伎へ

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