歌舞伎いろは

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大阪・新歌舞伎座 三代猿之助四十八撰の内『新・水滸伝』知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 市川右近

この劇場で宙乗りができるかどうか、まず考える

 ――新歌舞伎座で『新・水滸伝』を初めて上演されたのは2013(平成25)年8月でした。

 2010(平成22)年9月に新歌舞伎座開場記念の柿葺落興行でうかがったときに、2階席が随分前に張り出しているなと思いました。僕らの習性で、もしこの劇場に呼んでいただいたら、宙乗りができるだろうかと、つい考えてしまうんです。(笑)そのときは、1階席から天井が見えづらいから宙乗りは難しいかなと思いました。

 それが2013年に『新・水滸伝』をとお話をいただき、どうしようかと考えて思いついたのが、スーパー歌舞伎の『オグリ』と『八犬伝』でやった鏡の多用です。舞台に鏡を置けば、2階席の人たちからは1階席の通路が映って見え、1階席の人たちからは鏡に映る2階上方の宙乗りが見えます。

 ――舞台の上にもう一つ舞台があるような、二重構造のシンプルな舞台装置と鏡の使用は印象的です。

 全面の鏡ではなく、角度を変えられるような鏡にしましたので、客席も映り込みます。お客様も参加しておられるような気持ちになれるでしょうし、俳優との一体感も出ます。

 『伊吹山のヤマトタケル』(1988年9月、1989年1月)も、『雪之丞変化2001年』(1990年9月初演、いずれもPARCO劇場)でも、二重構造の構成舞台を用いました。師匠が考案された舞台美術です。師匠のなさってきた芝居づくりを間近に見せていただいた僕たちが、ここにあれをもってこよう、これもってこようと引っ張ってくる感じですかね。

大阪・新歌舞伎座 二十一世紀歌舞伎組 三代猿之助四十八撰の内『新・水滸伝』

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平成27年8月8日(土)~
30日(日)

公演情報

平成25年8月
大阪・新歌舞伎座
撮影:松竹株式会社

三代猿之助四十八撰の内「新・水滸伝」しん・すいこでん

林冲 市川 右  近
青華 市川 笑  也
王英 市川 猿  弥
姫虎 市川 笑三郎
お夜叉 市川 春  猿
公孫勝 市川 寿  猿
彭玘 市川 弘太郎
晁蓋 笠原    章

斜め宙乗りと鏡の演出でさらに面白く

 ――『伊吹山のヤマトタケル』といえば、「二十一世紀歌舞伎組」の始まりとなった作品ですね。

 僕たちが三代猿之助の澤瀉屋一門の若手であったとき、師匠を組長として結成したのが「二十一世紀歌舞伎組」です。師匠と親交のあったバレエの振付家、モーリス・ベジャールさんが率いた「20世紀バレエ団」にちなんだ命名でした。

 『新・水滸伝』の作者の横内さんも『雪之丞変化2001年』から参加され、スーパー歌舞伎の『八犬伝』(1993年6月初演)、『カグヤ』(1996年4月)、『新三国志』のI、II、III(それぞれ1999年4月、2001年4月、2003年3月、すべて新橋演舞場初演)を書かれました。いわば、僕らと同じ学校で学んだ、と思えるような方です。

 ――前回と同じ新歌舞伎座での再演にあたり、どんなことをお考えになりますか。

 師匠が掲げてきた3S、すなわち、スピード、スペクタクル、ストーリーを重視する芝居づくりが、前回の上演ではお客様に大変な好評をいただきました。また、前回の新歌舞伎座では普通の宙乗りでしたが、その前の中日劇場では客席の上を斜めに飛ぶ宙乗りをしておりました。今回の新歌舞伎座では、その斜め宙乗りをいたします。飛ぶ距離が長くなるし、鏡にも映るので、お客様に喜んでいただけるはずです。

 1カ月間、その作品を上演している間には決して登れなかった階段が、不思議なもので、再演になると一段上から上がれます。1カ月間、作品と向き合い、苦悩しながら取り組んだこととあわせ、再演までの間にほかの芝居に出て経験を重ねた成果が出るのかもしれません。今回も一段上でスタートを切ってさらに上を目指します。

※澤瀉屋の「瀉」のつくりは正しくは“わかんむり”です。

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