歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



「松竹大歌舞伎」中央コース『鳴神』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 中村梅枝

絶間姫と鳴神上人との関係

 ――雲の絶間姫はお父様の時蔵さんが得意にされています。

 父の絶間姫は好きです。品と格、色気があります。父は絶間姫という役にはまっていると思います。父は成駒屋のおじ様(六世歌右衛門)の教えを受けています。

 父がおじ様に教えていただいたとき、竜神を解き放つために注連縄を切った後、竜神を見上げる仕種をしたところ、「絶間姫には竜神は見えない、徳の高い鳴神上人だからこそ、竜神が見える。鳴神上人と絶間姫は並んではいけない」とおっしゃったそうです。鳴神上人を敬う気持ちを忘れずに勤めなさいという教えだと思います。お役は、さまざまな解釈があり、なさる方によって違います。また、そこが歌舞伎の魅力ですが、私はその解釈で演じたいと思います。

 ――お衣裳はいかがでしょう。金銀縫い取りの着付で、右肌を脱いでいます。

 スチール写真を撮影するので、衣裳を付けてみましたが、とても重いうえに片肌を脱いでいるので、バランスが悪いんです。これで長時間しゃべるのは大変だなと思いました。

 巡業ですので、日に2回公演のときもあります。昨年7月に国立劇場の「歌舞伎鑑賞教室」で、「渡海屋・大物浦」の典侍の局(すけのつぼね)を日に2度勤めました。体力的にとてもつらかったのですが、そのなかから学んだことも多くありました。体調を整えながら今回も乗り切りたいと思います。

歌舞伎座「松竹大歌舞伎」中央コース

平成28年6月30日(木)~7月24日(日)

※公演の会場については、上記、公演情報をご確認ください。

歌舞伎十八番の内『鳴神』

鳴神上人 尾上  松 緑
雲の絶間姫 中村  梅 枝
黒雲坊 中村  萬太郎
白雲坊 坂東  亀 寿

立役よりも女方

 ――この頃は女方をなさることが多いですね。

 たまに立役をさせていただくと、つくづく自分は女方だなと感じます。立役ですと、役に入る前にいろいろ考えて、自然にすることさえ意識してしまう。思考が女方になってしまったのかもしれません。手の動き、首の傾け方、足の置き方…、女方だと普通にできるのに、立役だと、これでよいのかと確認が必要です。以前は立役は衣裳も軽いし、裾も引いていないし、『弁天小僧』の赤星十三郎などは気持ちよく終われるし、いいなと思っていましたけれど、最近はそんなことを思わなくなりました。

 ――初役の場合は、どうやって役に近づいていかれますか。

 どんな人なのかと考えます。たとえばお茶を飲むときに、この役だったら、どういう風に飲むのかなとか、そんな些細な日常のことを考えてみます。芝居にすぐに役立つかどうかはわからないけれど、そんなことを頭の隅に置いています。

 ――巡業の場合は日々、土地も劇場も変わります。ご留意されることはありますか。

 花道がある劇場とない劇場があります。劇場に着いたら花道を見て、出のときはここで止まろうかと考えます。気を使うのはやはり体調です。宿泊先のホテルの部屋の冷房が効き過ぎていたり、乾燥している場合が多い。喉が駄目になってしまいますし、風邪をひかないよう空調には気を付けています。

ようこそ歌舞伎へ

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