歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



「松竹大歌舞伎」中央コース『鳴神』
梅枝さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 中村梅枝

「なぜ、こうなるか」を教えてくださった三津五郎のおじ様

 ――今回の雲の絶間姫も含め、女方の先輩でいらっしゃるお父様に役を教わることが多いと思います。

 もちろん父はきちんと教えてくれるのですが、「もう見てわかっているだろう」と言われることも多い。父は“感覚人間”なので、言葉の意味を汲み取るのに苦労することがあります。なんとなく受け取っていると、稽古が始まってから、「そんな風には教えていない」と怒られることもあります。

 ――先輩方は、それぞれ教え方も違うのでしょうね。

 昨年7月の典侍の局を玉三郎のおじ様に教えていただきました。おじ様は感覚的なことを論理的に説明してくださいます。おじ様の特別な感覚は、こんな緻密な裏付けがあってのことなのだと知りました。

 三津五郎のおじ様は、「なぜ、こうなるか」ということを、ものすごくわかりやすく教えてくださる方でした。しかも、こちらが意味を理解していないなと察すると、さらに噛み砕いて言ってくださるので、本当にためになりました。

気付けば歌舞伎の魅力にはまっている

 ――昨年10月に長男の大晴(ひろはる)さんが生まれました。お父様似と言う評判ですが。

 私に似ているという方もいらっしゃいますが、多くの方は家内に似ているとおっしゃいます。家では「ひろくん」と呼んでいます。父は喜んでくれています。5月の歌舞伎座で寺嶋和史くんの初お目見得での、音羽屋のおじさんと播磨屋のおじさんのお姿を見ていると、目に入れても痛くないというのはこのことなんだろうなと思いました。

 子どもが芝居をやりたいと言えばやらせます。でも、本人の意志に任せると言いながら、何となく周りから固められ、やらざるを得ない状況になるものなんですよ。そして、いつの間にか気が付くと、芝居の面白さがわかるようになっている。やればやるほどその魅力にはまります。私自身、父から本人の意志に任せると言われました。いつの間にか気が付くとその環境の中にいて、芝居の面白さがわかり、魅力にはまっていました。

 ――大変さもおありでしょう。

 それはそうです。父が勤めた役をさせていただくようになると、父が簡単にしているようなことでも、いろんなことが詰まっているんだなとわかります。親や先輩がしていることが自分にできなければ、非常につらいですし、その度に打ちのめされます。芸の深さを思い知ります。

中村梅枝 萬屋!

中村梅枝さんをもっと知りたい!

中村梅枝(なかむら ばいし)

生まれ 昭和62年11月22日、東京生まれ。
家族 父は五代目中村時蔵、弟は初代中村萬太郎。二代目中村錦之助は叔父、初代中村隼人はいとこにあたる。
初舞台 平成3年6月歌舞伎座『人情裏長屋』鶴之助で初お目見得。6年6月歌舞伎座四代目中村時蔵三十三回忌追善の『幡随長兵衛』倅長松、『道行旅路の嫁入』旅の若者で、四代目中村梅枝を名のり初舞台。
この一年の舞台

平成27年

7月 「平成27年7月歌舞伎鑑賞教室」(国立劇場)
『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」銀平女房お柳実は典侍の局
9月 「九月花形歌舞伎」(京都四條南座)
『あらしのよるに』みい姫
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『音羽嶽だんまり』七綾姫/『人情噺文七元結』和泉屋手代文七/『梅雨小袖昔八丈』お熊
11月 「松竹大歌舞伎」(全国公演)
『教草吉原雀』鳥売りの女実は雀の精/『魚屋宗五郎』宗五郎女房おはま
12月 「當る申歳 吉例顔見世興行」(京都四條南座)
『土蜘』巫子榊/『土屋主税』河瀬六弥

平成28年

1月 「平成28年初春歌舞伎公演」(国立劇場)
『小春穏沖津白浪』月本数馬之助
2月 「二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『新書太閤記』おゆう/『籠釣瓶花街酔醒』兵庫屋九重
3月 「三月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『寿曽我対面』化粧坂少将
4月 「明治座 四月花形歌舞伎」(明治座)
『芦屋道満大内鑑』安倍保名/『女殺油地獄』芸者小菊/『浮かれ心中』帚木
5月 「團菊祭五月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『寺子屋』戸浪/『勢獅子音羽花籠』芸者/『時今也桔梗旗揚』桔梗
6月 「平成28年6月歌舞伎鑑賞教室」(国立劇場)
『新皿屋舗月雨暈』宗五郎女房おはま

ようこそ歌舞伎へ

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