歌舞伎いろは

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歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」『権三と助十』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 坂東彌十郎

ずっと出たかった「納涼歌舞伎」

 ――「納涼歌舞伎」には思い出も多くおありのことと存じます。

 7月は、長くお世話になっていた澤瀉屋さんの興行がある月で、私も毎年のように歌舞伎座に出演しておりました。平成2(1990)年から「納涼歌舞伎」が始まりました。8月は澤瀉屋一門は休みの月でしたので、必ず「納涼歌舞伎」を拝見に上がり、「もし出演できるようなことがあったら、あの役をやりたい」などと妄想しておりました。

 念願がかなって「納涼歌舞伎」に初めて出演したのは、平成10(1998)年で、それ以降、『権三と助十』はかかっていません。平成12(2000)年からは、納涼の一員にしていただきました。『東海道四谷怪談』の宅悦をさせていただいた年です。初めの頃は、もっといろいろな役に出演したいなと思っておりましたが、そのうちどんどん出させていただくようになりました。

歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」

平成28年8月9日(火)~28日(日)

『権三と助十』ごんざとすけじゅう

権三 中村  獅 童
助十 市川  染五郎
権三女房おかん 中村  七之助
助八 坂東  巳之助
小間物屋彦三郎 中村  壱太郎
猿廻し与助 澤村  宗之助
左官屋勘太郎 片岡  亀 蔵
石子伴作 坂東  秀 調
家主六郎兵衛 坂東  彌十郎

新作に出演して勉強したこと

 ――今回は、第三部の笑福亭鶴瓶さんの落語を原作にした新作歌舞伎『廓噺山名屋浦里(さとのうわさやまなやうらざと)』で、留守居役秋山を演じられますが、「納涼歌舞伎」では新作にも随分出演されていますね。

 澤瀉屋さんのところでも、長く上演の絶えていた作品の復活上演や「スーパー歌舞伎」に代表される新作に取り組むことができました。新作や復活にはつくっていく楽しみがあります。「納涼歌舞伎」では、野田秀樹さんの書かれた『野田版 研辰の討たれ』(平成13年)『野田版 鼠小僧』(同15年)『野田版 愛陀姫(あいだひめ)』(同20年)をはじめ、いくつかの新作に出演することができました。

 「納涼歌舞伎」以外では、歌舞伎座で上演された宮藤官九郎さんの書かれた『大江戸りびんぐでっど』に出演し(同21年)、コクーン歌舞伎では串田和美さんの演出作品に参加しました。作者、演出家によってつくり方も異なり、それがたいへん勉強になりました。

 ――ご自身が新しいものをつくることにもつながるのでしょうか。

 自分が何かをつくって上演するときは、皆さんの演出法や作劇術を参考にしよう、などと思っておりましたが、私もとうとう還暦になってしまいました。勘三郎さん、三津五郎さんがいらっしゃらなくなり、「納涼歌舞伎」も世代交代が進みましたが、自分ではまだまだ若手のつもりです。これから、自分でいろいろやっていこうと思います。

 ――『廓噺山名屋浦里』では、どんな役を演じられるのですか。

 大藩の江戸留守居役の秋山という武士です。勘九郎さんの演じられる酒井宗十郎に宴席で嫌がらせをする敵役だとうかがっております。

 ――第二部では『紅翫(べにかん)』の庄屋銀兵衛を勤められます。浅草の夏の賑わう情景が描かれた風俗舞踊で、橋之助さんの紅翫、紅屋勘兵衛に絡むお役ですね。

 平成11(1999)年9月に梅玉のお兄さんの紅翫で踊って以来になります。

ようこそ歌舞伎へ

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