歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」『祝勢揃壽連獅子』『加賀鳶』『芝翫奴』
今度の舞台を楽しく見るために

ようこそ歌舞伎へ 四代目中村橋之助 三代目中村福之助 四代目中村歌之助

四代目中村橋之助

憧れの『連獅子』を踊れる喜び

 ――『祝勢揃壽連獅子(せいぞろいことぶきれんじし)』をお父様の芝翫さんの親獅子、ご兄弟の仔獅子で踊られます。橋之助さんは中村流の舞踊会「雀成会」(平成22年5月)で親獅子を、お父様とは舞踊会などで仔獅子を踊っていらっしゃいます。今回はどんなところに気を付けて踊られますか。

 橋之助 親獅子のときは前シテも後シテも両方大変で、でも楽しかったです。父とは仔獅子の後シテだけを踊り、前シテの経験はありません。後シテは大きい拵え(こしらえ)をしますので、機敏に動き回り、頭や衣裳に負けないように踊らないといけないですし、気持ちをつくることも大切です。

 ――福之助さんは「雀成会」で仔獅子を踊られました。どこに大変さを感じられましたか。

 福之助 仔獅子のときは、中学一年生で初めての長時間の舞台でしたので、緊張しました。伯母の梅彌(中村流家元)に指導を受けましたが、自分ではそのとおりにしているつもりなのに体がうまく使えませんでした。

三代目中村福之助

 ――歌之助さんは初めてですね。伯父様の勘三郎さんと勘九郎さん、七之助さんの『三人連獅子』に憧れたとうかがっています。

 歌之助 『三人連獅子』には迫力を感じました。小さい頃は後シテを真ん中の兄(福之助)と真似をして踊っていました。

 福之助 毛の代わりに毛布を頭に巻いて振っていました。ですから「雀成会」で踊れるのも喜びでした。

重い毛で後シテの稽古を

 ――『連獅子』はどんなところがお好きですか。

 橋之助 「雀成会」の前月が歌舞伎座の「御名残四月大歌舞伎」で、勘三郎の伯父たちが『三人連獅子』を踊っていたので、勉強のため、ほとんど毎日福之助と見に行きました。小さいときは後シテと、前シテの花道での振りや「見るより仔獅子は勇み立ち」の振りが好きでした。仔獅子が親獅子に谷に落とされ、そこから後につながっていきます。

 後シテは嫌でも目に残りますから、全部見終えたお客様に前シテの踊りもよかったねと思っていただけるように、両方がしっかりとつながるように踊りたいと思います。

四代目中村歌之助

 ――毛振りのお稽古も大変そうですね。

 橋之助 父に聞いたのですが、獅子の毛は、最初は白で、汚れたら赤、それを使い込んだら黒に染めるのだそうです。すると毛が段々に重くなっていく。僕が初めて『連獅子』の親獅子を勤めたときには、一番重い黒い毛でお稽古をするように父に言われ、床山さんから、お芝居では使えないような長い毛の黒頭をお借りし、父の稽古を受けました。

 僕はここ何年か父の親獅子で後シテをやらせていただいていますが、福之助は久しぶりですし、歌之助は初めてです。今回も三人で、長い毛をお借りしてお稽古をしています。

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『祝勢揃壽連獅子』撮影:荒木大甫

『祝勢揃壽連獅子』(せいぞろいことぶきれんじし)

 清涼山の石橋で、手獅子を携えた狂言師たちが、石橋のいわれや清涼山の風景などを舞い始めます。石橋の向こうは文殊菩薩の浄土。菩薩の使いといわれる獅子の親子が、子を千尋の谷に突き落とし、這い上がった子を育てるさまを舞う狂言師は、やがて胡蝶を追いかけて姿を消しました。しばらくあったのち、今度は親子の獅子の精が現れ、牡丹の花や胡蝶と戯れるうち、獅子の狂いを見せると、最後はどっしりと獅子の座につくのでした。

盲長屋梅加賀鳶『加賀鳶』(めくらながやうめがかがとび かがとび)

 火消しに売られた喧嘩を鳶が買い、湯島の切通しから本郷通りまで押し出してきました。しかし、先方に乗り込んだ鳶の親分、梅吉が戻って来て、いったん皆を引かせます。

 一方、御茶の水で道端の旅人から持ち金を奪った按摩の道玄。長屋に帰ると盲目の女房おせつの羽織をとり上げ、質屋へ向かいます。そこへ姪のお朝が、奉公先の伊勢屋の主人の肩もみをしてもらった金を、おせつに渡しに来ました。お朝が懸命に金の事情を話すのを聞いた道玄はふと思いつき、愛人のお兼と伊勢屋をゆすりに出かけます。店先に居座る二人をやり込め、追い帰したのは鳶頭の松蔵でした。

 長屋に戻った道玄はお朝を逃がしただろうとおせつを折檻。家主が窮地を救い、道玄の悪事も暴こうとするところ、捕手から逃げようと道玄は本郷までやって来ましたが…。

『芝翫奴』(しかんやっこ)

 ここは桜満開の吉原仲野町、紋の入った箱提灯を手に奴駒平がやって来ます。旦那のお供に遅れてしまったので、浅草田圃の近道を走ってきました。どんなときも奉公に精を出す正直者の駒平は、旦那の格好よさが自慢です。廓で一番というその姿を真似てみたり、座敷遊びの様子を見せたりしているうちに、急いでいることを思い出した駒平、再び旦那を追いかけて走り出しました。

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