歌舞伎いろは

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歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」『祝勢揃壽連獅子』『加賀鳶』『芝翫奴』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 四代目中村橋之助 三代目中村福之助 四代目中村歌之助

四代目中村橋之助

受け継いだ帯を締めて三人三様の踊りを見せる

 ――成駒屋ゆかりの『芝翫奴』を三人が役替りで踊られます。

 橋之助 10月公演で三人が踊った『祝帆上成駒宝船(ほあげていおうたからぶね)』でも、お客様に「それぞれ個性がありますね」、と言っていただきました。自分のことはわかりませんが、福之助は基本に忠実に、振りの一つひとつを丁寧に踊っています。また、歌之助は伯母の梅彌から教えてもらったことを大事にしながら、そのなかで「ここを見せたいんだな」と思っている箇所があることが見えますね。

 ――福之助さんは初めて『芝翫奴』を踊られますね。

 福之助 初めてですが、幼い頃から馴染みのある舞踊で、兄と弟が稽古をするときもずっと後ろで見ておりました。奴の格好をするのが初めてですし、隈取も「八月納涼歌舞伎」の『土蜘』の坂田金時と『連獅子』の仔獅子の後シテしか経験がありません。「雀成会」で『三社祭』(平成27年10月、平成28年5月)を踊ったときには体がとても疲れましたが、兄に『芝翫奴』はもっとつらいと言われたので、心配ですが頑張ります。

三代目中村福之助

 ――歌之助さんは、「雀成会」(平成25年5月)で踊られています。

 歌之助 それまでは浴衣でお稽古をしていたのが、本番前のお稽古で初めて衣裳を着て重さを感じました。本番も大変でしたが、終わったときの幕切れの見得を一人で切れるのが、気持ちがよかったです。今度は「雀成会」の反省も生かしてやりたいと思います。

 今回は、父が幼い頃に使っていた帯を再生し、僕たち三人で使い回します。受け継がれてきた帯への思いもあるので、怖さもありますが、思い切り楽しみたいです。

父からの言葉を胸に挑む

 ――橋之助さんは平成27年6月・7月の全国公演で、1カ月間勤められています。

 橋之助 父が特注でつくってもらった家紋の「祇園守」が入った大きい提灯があります。全国各地の会場を周る公演では劇場の大きさがまちまちで、大きな提灯を使えない場合もあるので、普通の小さい提灯を使いましたが、今回は歌舞伎座なので、大きな提灯を使いたいと思います。早いうちから小道具さんに提灯を出していただき、お稽古をしています。

四代目中村歌之助

 ――お父様からのご注意はありますか。

 橋之助 父には『芝翫奴』は「そんなに堅苦しい踊りではない、お客様に楽しんで観ていただくのが一番だから、100パーセントで踊っても面白くない」と言われました。

 福之助 7月に大阪松竹座で僕が『芋掘長者』の兎原左内を踊ったとき、父に「全部をちゃんと踊るのもいいけれど、お客様に見てもらうのだから、見せたいところを強調するところがあっていいと思うよ」と言われました。それを心の片隅に置きます。まだ一所懸命に踊るしかないので、応用ができるようになりたいです。

 歌之助 僕はあまり表に感情を出さないタイプなので、父には「もっと楽しんでやったほうがいい」と言われます。

歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」

歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」

平成28年11月1日(火)~
25日(金)

『祝勢揃壽連獅子』せいぞろいことぶきれんじし

狂言師後に親獅子の精 橋之助改め中村  芝 翫
狂言師後に仔獅子の精 国 生改め中村  橋之助
狂言師後に仔獅子の精 宗 生改め中村  福之助
狂言師後に仔獅子の精 宜 生改め中村  歌之助
長楽坊 中村  萬太郎
萬年坊 尾上  右 近
昌光上人 中村  梅 玉
慶雲阿闍梨 片岡  仁左衛門
文殊菩薩 坂田  藤十郎

『芝翫奴』しかんやっこ

奴駒平 国 生改め中村  橋之助(1日~9日)
宜 生改め中村  歌之助(10日~17日)
宗 生改め中村  福之助(18日~25日)

盲長屋梅加賀鳶めくらながやうめがかがとび 『加賀鳶』かがとび

天神町梅吉/竹垣道玄 松本  幸四郎
女按摩お兼 片岡  秀太郎
春木町巳之助 市川  染五郎
魁勇次 尾上  松 也
虎屋竹五郎 坂東  巳之助
磐石石松 尾上  右 近
お朝 中村  児太郎
数珠玉房吉 国 生改め中村  橋之助
御守殿門次 宗 生改め中村  福之助
昼ッ子尾之吉 宜 生改め中村  歌之助
道玄女房おせつ 芝喜松改め中村  梅 花
おつめ婆 中村  歌女之丞
伊勢屋与兵衛 松本  錦 吾
金助町兼五郎 市川  男女蔵
妻恋音吉 中村  松 江
天狗杉松 片岡  亀 蔵
御神輿弥太郎 大谷  友右衛門
雷五郎次 市川  左團次
日蔭町松蔵 中村  梅 玉

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