歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



日本特殊陶業市民会館「錦秋名古屋 顔見世」『蜘蛛絲梓弦』『春重四海波』
今度の舞台を楽しく見るために

ようこそ歌舞伎へ 片岡愛之助

印象的な出方、引込み方で前回とは違うものに

 ――『蜘蛛絲梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』は平成27(2015)年11月に「永楽館歌舞伎」で初めて勤められ、今回が2度目になります。

 永楽館は収容人員300人程度の昔ながらの小屋です。舞台機構は手動で、お客様の手が届くようなところで役者が芝居をします。その制約のなかで、お客様に喜んでいただけるものをと考えました。そういう意味では、今回の日本特殊陶業市民会館のほうが制約がありません。

 ――5役を次々と変わる五変化舞踊です。

 なさる方によって、5役が異なります。僕は小姓で登場し、太鼓持になり、座頭に変わり、傾城になって最後が蜘蛛の精です。最近は女方をすることが少なくなりました。傾城は久しぶりの女方でした。

 ――前回と変えるところはありますか。

 登場の仕方を全般的に変えようと考えておりますので、前とはまったく違うものになると思います。言うとネタバレになってしまうので、細かくは控えますが、もっと印象的な出方、引込み方になると思います。

 『大津絵道成寺』(平成29年1月歌舞伎座)でも、見台抜け(このときは常磐津の山台から座頭として現れた)を久しぶりにいたしました。ただ、芝居は幕が開いてみないとわかりません。開いてからどんどん進化していきます。初日を終えてから、大幅な変更がある場合もあります。

 ――前回はどんなところがご苦労でしたか。

 僕よりもスタッフさんが大変だったと思います。ひとつ紐を結び損ねると、タイミングが狂って間に合わなくなります。衣裳を脱がす人と着せる人、脱いだ衣裳を受けとる人もいます。僕は早替りをするためにA地点からB地点まで舞台裏をいかに速く走るかが仕事です。着替え場所は自動車レースのF1のピットみたいなものです。

 稽古できる回数が限られていますし、自分のお弟子さんではない方のお力も借りるので、そういう意味では大変ですね。しかも、今回は永楽館より大きい劇場なので、走行距離が長くなります。そこを工夫しようと思っています。コースを考えて仕掛けのようなものをつくっていただこうかなとお願いしています。

日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(中ホール)「錦秋名古屋 顔見世」

平成29年10月1日(日)~25日(水)

『蜘蛛絲梓弦』

           
小姓寛丸
太鼓持愛平
座頭松市
傾城薄雲太夫
蜘蛛の精
片岡  愛之助
   
碓井貞光 中村  松 江
坂田金時 中村  亀 鶴
源頼光 中村  梅 玉

大先輩の頼光に身が引き締まる

 ――歌舞伎では『土蜘』などでお馴染みの「頼光と四天王」物に分類される作品です。

 魔物と対峙する英雄、源頼光という設定にわくわくしますよね。今回、本当に驚いたのは、頼光に梅玉お兄さんが出演してくださることです。配役を拝見したとき、間違いかなと思いました。襲名でもないのに、本当にありがたいことです。勉強になります。大先輩に出ていただいて、身の引き締まる思いです。頑張らないといけません。

 ――蜘蛛の精では糸を撒きますね。

 思いのほか糸を撒くのが難しいんですよ。下手をすると、ばさっと塊になって落ちてしまうんです。踊りながら、走りながら振り向きざまに撒く。慣れないと難しいですね。かといって、その都度、専用の糸をつくらないといけないので、そう何度も稽古してみるわけにもいかないですし。難しいです。

『極付 幡随長兵衛』(きわめつきばんずいちょうべえ)

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平成27年11月出石永楽館
(C)井川由香

 源氏の御大将、源頼光は物の怪に憑りつかれて多田の御所に伏せっていました。家臣の碓井貞光、坂田金時が寝ずの番をしていましたが、睡魔に襲われたところへ小姓寛丸が茶を持って現れ、不審な動きに二人が斬り払うと、その姿は忽然となくなりました。その後、太鼓持の愛平、座頭松市も、現れては捕らえようとすると消えてしまいます。葛城山の土蜘蛛の仕業ではないかといぶかしむ二人。頼光の寝所では久しぶりに訪ねてきた傾城薄雲太夫が、突然、本性を現して頼光に襲いかかります。頼光が宝剣、蜘蛛切丸の威徳で退散した変化のあとを追い、主従三人は葛城山の蜘蛛の精の棲家にたどり着きました。日本を魔界に変えようと野望を抱く蜘蛛の精に、三人が刀を抜いて立ち向かいます。

ようこそ歌舞伎へ

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