歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



日本特殊陶業市民会館「錦秋名古屋 顔見世」『蜘蛛絲梓弦』『春重四海波』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 片岡愛之助

演じていてすごく楽しい高砂頼母

 ――『春重四海波(はるをかさねてしかいなみ)』も、愛之助さんは「永楽館歌舞伎」で初演され(平成28年11月)、今回が2度目になります。

 初演では永楽館のある兵庫県の豊岡を舞台にしましたが、今回は名古屋に書き直しました。登場人物は初演とあまり変わりませんが、つなぎ目のところを変えようかと思っております。

 ――松竹新喜劇の作品を筋立てはそのままに、義太夫を入れて歌舞伎として再構成されました。

 新喜劇にはいい作品がたくさんあるんですよ。脚色の水口一夫先生が、歌舞伎に適しているのではとお薦めくださいました。

 ――演じられるのは高砂頼母(たかさごたのも)です。武術指南役の娘である浪路の婿になるはずでしたが、剣術の技量がいまひとつだったため、事態は思わぬ方向に動き出します。

 まじめで本当に好青年で、一途な人です。浪路との試合ではあっけなく負けてしまいます。微笑ましいといいますか、演じていてすごく楽しいです。

日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(中ホール)「錦秋名古屋 顔見世」

平成29年10月1日(日)~25日(水)

『春重四海波』

高砂頼母 片岡  愛之助
伯母磯路/磯路娘八重 中村  歌女之丞
若党与八 中村  梅 丸
沖津俊斎 中村  寿治郎
沖津浪路 中村  壱太郎

つらくてもジンとくる老け役

 ――第一幕は若侍として登場します。

 若さを強調するあまり、あざとくならないように注意しています。

 ――二幕目はそれから20年後です。

 剣術修業で各地を周り、いろいろ苦労をし、やっと浪路のいる沖津家に戻ってくるのですが、いかんせん、まだ向こうのほうが強かった…。どう見せてやる、こう見せてやると、あまり考えません。一幕目とは演じ分けようとは思っていますが、そんなに強く意識はいたしません。

 ――三幕目は、二幕目の25年後。頼母の姿も劇的に変化しています。

 状況も姿も変わっています。ご覧いただくとおわかりになると思いますが、引っ込んで、素早く支度しないと次の幕に間に合いません。それぐらいせわしいんですよ。実をいうと、『蜘蛛絲』の五変化よりも大変なくらいです。いちばん大変なのが衣裳の着替えですね。

 ――老け役をなさるのは珍しいのではないでしょうか。

 たしかに、今まで老け役はあまりしたことがありません。市川海老蔵さんの自主公演「ABKAI」(平成25年8月シアターコクーン)で「花咲じいさん(『疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。』)」のじいさん(正造爺)をさせていただいたくらいではないでしょうか。

 老け役は腰を曲げているのがつらいですね。延ばしたときに音がします。無理にずっと腰を曲げているのは大変だなと思いました。ただ、この芝居では老けのときが、一番ほろっと来る場面ですので、演じていてもジンときますね。

『春重四海波』(はるをかさねてしかいなみ)

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平成28年11月出石永楽館
(C)井川由香

 武術指南の沖津俊斎の家では、入り婿の頼母と一人娘の浪路の婚礼を明日に控え、準備に余念がありません。そこへ帰ってきた美男美女の頼母と浪路、相思相愛の二人を周囲も温かく見守っています。と、俊斎が突然、娘は一刀流の免許皆伝だが、万が一にも婿が劣るようでは家の恥、頼母の手の内を見たいと言い出しました。卜伝流の頼母と一刀流の浪路、木刀を手にしては本気の立ち合い、その結果…。明日の祝言は許さぬと言い放つ俊斎、勝手に祝言すると息巻く浪路。しかし、頼母は未熟さを恥じて武者修行に出ると言い張り、旅立ってしまいました。そして20年後、風体も変わった頼母が帰ってきました…。

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