歌舞伎いろは

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巡業「松竹大歌舞伎」中央コース『人情噺文七元結』
芝翫さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 中村芝翫

襲名披露興行の締めくくりとして

 ――八代目芝翫の襲名披露興行も、この中央コースの公演で終わります。

 早かったような長かったような…。大変でしたね。やっとほっとするような感じです。ですが、襲名興行の間は、苦しいことはありませんでした。それは先輩方のお蔭だと思います。

 白鸚、菊五郎、吉右衛門、仁左衛門のお兄さん方、時蔵さん、雀右衛門さんと、先輩方が皆さん出てくださいました。梅玉のお兄さんは襲名披露の間、大阪以外ずっと付き合ってくださいました。先輩方と一緒の舞台で芝居をすることで、芝居はこういうものなんだと思ったり、こうやるんだと発見があったり、あらためて勉強になりました。

 ――同時に四代目橋之助、三代目福之助、四代目歌之助を襲名された三人の息子さんはいかがですか。

 子どもたちは身に余るようなお役を頂戴したんではないかと思います。歌之助はまだ高校生でこれからですが、橋之助と福之助は肉体的にも精神的にもずいぶん大きくなってくれました。

 ――一緒に襲名された二代目梅花さんが、『文七元結』ではお兼を初役で演じられます。

 梅花は父のお兼を見て修業していた男ですからね。最初お兼をやると言ったときは涙をこぼしていました。それだけ彼には父の演じたお兼への思いがあるのでしょう。地方の会場を回るこの1カ月間は、父になったつもりで演じてくれるのではないでしょうか。

 倅たちもそうですが、梅花も大きな名を継ぐ自覚を持ち、人間的にもしっかりしてきたような、頼もしい気がします。

 

 ――では、最後に、芝翫さんが今後、演じたいお役などあれば、お教えください。

 襲名後は、『芝浜革財布』、『国性爺合戦(こくせんやかっせん)』、『巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)』と、新しい歌舞伎座になってから出ていないものを、なるべく演じてきました。面白い狂言が絶えてしまったりするともったいないですからね。これからも、そういうお芝居も見付けてやっていきたいと思います。

 そして、『五斗三番叟(ごとさんばそう)』も家の芸ですので、やらせていただきたいです。『法界坊』も四世芝翫が得意にしたものですからやってみたいですし、『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』「吉野川」の大判事はぜひ演じたいですね。まだまだたくさんありますよ。

成駒屋!

中村芝翫さんをもっと知りたい!

八代目 中村芝翫(なかむら しかん)

生まれ 昭和40年8月31日、東京生まれ。
家族 七代目中村芝翫の二男。祖父は五代目中村福助。兄は九代目中村福助。息子は四代目中村橋之助、三代目中村福之助、四代目中村歌之助。
初舞台 昭和45年5月国立劇場『柳影澤螢火(やなぎかげさわのほたるび)』吉松君で中村幸二の名で初舞台。
襲名 昭和55年4月歌舞伎座『沓手鳥孤城落月(ほととぎすこじょうのらくげつ)』裸武者石川銀八、『女暫』手塚太郎光盛ほかで三代目中村橋之助を襲名。平成28年10月・11月歌舞伎座『極付幡随長兵衛』幡随院長兵衛、『熊谷陣屋』熊谷直実、『祝勢揃壽連獅子』狂言師後に親獅子の精、『盛綱陣屋』佐々木盛綱ほかで八代目中村芝翫を襲名。
受賞 平成7年松尾芸能賞新人賞、23年日本芸術院賞ほか、受賞多数。
この一年の舞台

平成29年

7月 「松竹大歌舞伎」東コース
襲名披露『口上』/『熊谷陣屋』熊谷直実
9月 「松竹大歌舞伎」西コース
襲名披露『口上』/『熊谷陣屋』熊谷直実
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『漢人韓文手管始』幸才典蔵
12月 「吉例顔見世興行」(ロームシアター京都)
『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」渡海屋銀平実は新中納言知盛/『人情噺文七元結』左官長兵衛

平成30年

1月 「壽 初春大歌舞伎」(歌舞伎座)
『七福神』毘沙門/『双蝶々曲輪日記』「角力場」濡髪長五郎/『勧進帳』片岡八郎
2月 「二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『春駒祝高麗』曽我五郎/『熊谷陣屋』梶原平次景高/『壽三代歌舞伎賑』男伊達成駒屋芝翫
3月 「三月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『国性爺合戦』甘輝/『芝浜革財布』魚屋政五郎
4月 「四国こんぴら歌舞伎大芝居」(旧金毘羅大芝居〈金丸座〉)
『鞘當』留男/『魚屋宗五郎』魚屋宗五郎/『鎌倉三代記』佐々木高綱
6月 「六月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『妹背山婦女庭訓』「三笠山御殿」豆腐買おむら/『巷談宵宮雨』龍達

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