歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



南座「當る亥歳 吉例顔見世興行」『義経千本桜』「木の実」「すし屋」
仁左衛門さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 片岡仁左衛門

配役が変われば芝居も変わるのが、歌舞伎の楽しみ

 ――新装開場での南座での顔見世興行となります。仁左衛門さんは襲名の前月と手術のときを除いては、ずっと京都の顔見世興行にご出演されています。

 南座で2年間、顔見世ができませんでした。子どものときから、一年の締めくくりは南座の顔見世でしたから、戻ってこられてうれしいです。お客様のためのエレベーターもつきましたし。昔は、楽屋の窓も隙間風が入るからと、目張りしていたりしたのが懐かしいですね。

 ――先日は、文化功労者に選出されました。

 身が引き締まる思いです。10月は歌舞伎座で『助六(曲輪初花桜)』を演じておりました。自宅で十一代目團十郎のおじさんの助六のビデオを拝見している最中に、文化庁からお電話をいただき、仏壇の父母、先祖に報告をしました。

 ――これまでいろいろなことがおありだったかと存じます。

 大病をし、命が助かり、再び舞台に立てるようになったときは、おこがましい言い方ですが、神様が「歌舞伎のために頑張れ」とおっしゃってくださったような気がして。それからは、極力歌舞伎に絞り、父を含めた先輩、父から話を聞いていた先人の芸を、私自身も勉強をしながら、後輩に伝えなければと思っております。

 ――今、歌舞伎についてはどんな思いをお持ちでしょう。

 ただただ歌舞伎が好きという思いでまいりました。舞台に立つ前は嫌だと思った役でも、演じていると好きになってしまいます。その人物になりきらないとお芝居は面白くなりません。人物を演じるのではなく、人物になることが大事だと思います。

 商業演劇で、歌舞伎ほど同じ狂言を繰り返し上演する演劇は少ないでしょう。「またこの出し物をやるの」と思われるかもしれませんが、配役が変われば芝居も変わります。その違いも楽しみの要素だと思います。

 ――これからはどうしていらっしゃりたいですか。

 古典物の演技法をなぞるのではなく、掘り下げることで、新しい魅力を掘り起こして、歌舞伎をご存じないお客様に古典のよさを訴えたい。その努力が一番大事です。言い古された表現ですが、死ぬまで修業です。

松嶋屋!

片岡仁左衛門さんをもっと知りたい!

十五代目 片岡仁左衛門(かたおか にざえもん)

生まれ 昭和19年3月14日、大阪府生まれ。
家族 父は十三代目片岡仁左衛門。五代目片岡我當、二代目片岡秀太郎が兄、息子は初代片岡孝太郎。初代片岡千之助は孫に当たる。
初舞台 昭和24年9月大阪 中座『夏祭浪花鑑』市松で本名の片岡孝夫で初舞台。
襲名 平成10年1・2月歌舞伎座『吉田屋』伊左衛門、『助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)』助六ほかで十五代目片岡仁左衛門を襲名。
受賞、受章 昭和44年芸術選奨文部大臣新人賞、同61年度芸術祭賞、同62年度日本芸術院賞。平成11年毎日芸術賞、大阪舞台芸術賞、同15年朝日舞台芸術賞、同18年紫綬褒章、日本芸術院会員、同27年重要無形文化財保持者(人間国宝)認定、同28年読売演劇大賞、同30年文化功労者ほか、受賞・受章多数。
この一年の舞台

平成29年

12月 「當る戌歳 吉例顔見世興行」(ロームシアター京都)
『二人椀久』椀屋久兵衛/『人情噺文七元結』鳶頭伊兵衛

平成30年

2月 「二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『壽三代歌舞伎賑』芝居茶屋亭主/『仮名手本忠臣蔵』「七段目」寺岡平右衛門
3月 「三月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『於染久松色読販』鬼門の喜兵衛/『神田祭』鳶頭
4月 「四月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『絵本合法衢』左枝大学之助・立場の太平次
6月 「六月博多座大歌舞伎」(博多座)
『伊達の十役』八汐/『俊寛』俊寛僧都
7月 「七月大歌舞伎」(大阪松竹座)
『勧進帳』富樫左衛門/『御浜御殿綱豊卿』徳川綱豊卿
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『助六曲輪初花桜』花川戸助六
11月 「當る亥歳 吉例顔見世興行」(南座)
『封印切』亀屋忠兵衛/『寿曽我対面』工藤左衛門祐経

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