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それでは、実際にレファレンスサービスを体験してみましょう!
歌舞伎美人編集部から松竹大谷図書館に質問し、サービスを利用してみます。

 今回のテーマは、今年没後130年を迎えた「河竹黙阿弥」です。
 河竹黙阿弥(1816~1893)は、江戸幕末から明治時代にかけて活躍した歌舞伎の狂言作者です。『三人吉三』、『青砥稿花紅彩画』(『弁天娘女男白浪』、『白浪五人男』)、『髪結新三』、『土蜘』など、多くの歌舞伎作品を手がけています。世話物を得意とし、盗賊が主人公の作品は「白浪物」と呼ばれています。また、七五調のリズムによるせりふ回しが特徴です。

 黙阿弥に関する4つの質問に対し、それぞれ資料をご提案いただきましたのでご紹介します。

今年1月に行われた所蔵資料展示「黙阿弥尽くし!―河竹黙阿弥没後130年―」

(該当質問をクリックすると回答内容にジャンプします)

Q 歌舞伎狂言作者“河竹黙阿弥”の人物像を知りたい!

回答
河竹黙阿弥に関する書籍は多数ございます。入門編としてこちらの2冊はいかがでしょうか。

「黙阿弥」(1993、文藝春秋)

黙阿弥の生涯を、曾孫・河竹登志夫氏からの目線で記した書籍です。秘蔵の資料などをもとに、知られざる一面も描かれた1冊です。黙阿弥にちなみ、表紙には白浪模様があしらわれています!

「季刊雑誌歌舞伎」第三号 特集 河竹黙阿弥と白浪狂言(1969、松竹演劇部)

歌舞伎全般に関する情報雑誌です。第三号で「黙阿弥特集」が組まれていました。「白浪狂言について」「七五調セリフの考察」「黙阿弥の『黙』の字について」などのコラムや、舞台写真が多く掲載されています。

編集部コメント

 「季刊雑誌歌舞伎」の黙阿弥特集では、場面ごとに区切りながら丁寧に作品紹介をしているページや、立廻りを1ポーズずつ撮影し、順番に並べて一つひとつの動きを説明しているページもありました。ご紹介の通り、入り口にぴったりな1冊だと感じます。

「季刊雑誌歌舞伎」第三号

さらに知りたい方には、こちらの書籍もご紹介しています。

「没後百年 河竹黙阿弥―人と作品―」付録:黙阿弥江戸芝居地図(1993、早稲田大学演劇博物館)

「没後百年 河竹黙阿弥―人と作品―」という、平成5(1993)年4月9日~5月30日に早稲田大学演劇博物館で開催された展覧会の図録です。特に付録の黙阿弥江戸芝居地図は、東京都の地図に、河竹黙阿弥ゆかりの地や、作品の舞台となった場所が記されている、ほかにはない珍しい資料です。

編集部コメント

 地図には作品名・場名が記載されているため、舞台の情景を思い浮かべながら、現在の町の様子と照らし合わせることができました。東京都には、作品の舞台となった場所が多く存在していることが分かり、なかでも隅田川の周辺にはスポットが集結していますので、川沿いを散歩しながら黙阿弥巡りをするのも楽しそうです。

 「黙阿弥江戸芝居地図」をもとに、歌舞伎美人編集部が実際に訪れたゆかりの地をご紹介します!

東京都 隅田川周辺 地図

①河竹黙阿弥翁住居跡
河竹黙阿弥が住んでいた、正智院があったとされる場所に石碑がありました。雷門と浅草寺の間、仲見世通りの裏道にあります。この石碑の近くには『白浪五人男』の登場人物の人形も置かれており、地上や建物の上など、さまざまな場所に設置されているので、ぜひ探してみてください。

②百本杭跡
現在の両国駅の西口付近にあったという百本杭。ここは『三人吉三』「大川端場庚申塚の場」の舞台になった場所と言われており、「大川」とは「隅田川」の別名だったようです。このあたりは昔、川波が強く当たる地域だったため、護岸工事として多くの杭を打ったことが百本杭のいわれとなります。

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Q 黙阿弥作の歌舞伎舞踊について、もっと知りたい!

回答
こんな視点からいかがでしょうか。

「日本舞踊全集」全8巻(1977-1988、日本舞踊社)

舞踊の歌詞や解説、舞台写真が掲載されている、大変読み応えのある書籍です。専門的な情報も多く記されているため、実際に舞踊関係者も本書籍を使用することがあります。

「日本舞踊全集」全8巻

「をどりの小道具」(1964、能楽書林)

歌舞伎舞踊の小道具に特化した書籍です。作品ごとに、小道具の説明が細かく記されており、一つひとつ分かりやすいイラストがついています。

「をどりの小道具」

「歌舞伎衣裳」(1996、松竹衣裳)

歌舞伎公演の衣裳に特化した書籍です。多くの衣裳写真が、作品名・役名とともに掲載されており、役を思い浮かべながら、1着1着をじっくりと確認することができます。

「歌舞伎衣裳」表紙
「歌舞伎衣裳」『土蜘』『保名』衣裳

編集部コメント

 今年の歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」では、黙阿弥の舞踊作品のうち、『土蜘』『連獅子』が上演されています。ご観劇前に書籍をご確認いただくことで、新たな視点で舞台をお楽しみいただけるかもしれませんね。

 また松竹大谷図書館では、明治時代から観劇の記念のお土産として人気のあった歌舞伎俳優の写真「歌舞伎ブロマイド」を、デジタル化して公開する作業を行っています。令和元(2019)年クラウドファンディングプロジェクト「【第8弾】写真で蘇る名優の面影、歌舞伎の魅力を次世代へ。」で、デジタル化した歌舞伎ブロマイドを公開準備中です。

 今回は、公演にちなみ『土蜘』の歌舞伎ブロマイドを見せていただきました。書籍に掲載されている衣裳写真と見比べても、柄や形が変わっていないように感じます。型を大切にする、歌舞伎の古典作品ならではの魅力を再認識することができました。

歌舞伎ブロマイド
『土蜘』土蜘の精=六世尾上菊五郎

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Q 過去に上演された黙阿弥作品の、あらすじや配役が知りたい!

回答
作品名などから、こちらで確認することができます。

歌舞伎公演 筋書

松竹大谷図書館では、これまでの歌舞伎公演の筋書を所蔵しております。過去の気になる公演・気になる月の筋書をご覧いただけますので、どうぞお声がけください。

黙阿弥作品が上演された、過去の筋書(歌舞伎座)

編集部コメント

 歌舞伎公演の筋書は、同じ月に「初版」「再版」の2種類が発行されていることをご存知でしょうか。月の前半に発行される「初版」には、各演目の絵看板が掲載されており、後半に発行される「再版」には、公演の舞台写真が掲載されていますので、ぜひどちらもお手に取ってみてくださいね。

 また松竹大谷図書館には、ポスターにあたる「辻番付」という、大変貴重な資料も所蔵されていました!
芝居の「番付」とは、演目の内容や配役を記した印刷物のことで、なかでも興行の始まる前に貼りだされたり、配られたりした大判一枚摺りのものを「辻番付」と言います。これが現在のポスターやチラシにあたります。

辻番付「第一期歌舞伎座初興行」明治22(1889)年11月
辻番付『青砥稿花紅彩画』初演 文久2(1862)年3月 市村座

 松竹大谷図書館で所蔵している、明治時代から戦前までの歌舞伎座の「辻番付」「絵本役割」「筋書」は、松竹大谷図書館HPデジタルアーカイブで公開しています。(松竹大谷図書館所蔵・芝居番付検索閲覧システムはこちら)。

 また、黙阿弥は絵が上手なことでも知られており、狂言作者の仕事の一つでもある、辻番付や看板の下絵を描くのが大変得意だったそうです。明治22(1889)年11月歌舞伎座初興行は、『俗説美談黄門記』、所作事『六歌仙』で幕を開けましたが、こちらの辻番付下絵は、黙阿弥が手がけた下絵の一つです。

「第一期歌舞伎座初興行」黙阿弥筆辻番付下絵 雑誌『歌舞伎』第11号(明治34〈1901〉年4月)より

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Q黙阿弥の作品を読みたい!
Q七五調のせりふについて、もっと知りたい!

回答
演目の全せりふを納めている書籍はたくさんあります。たとえば『弁天娘女男白浪』であれば、こちらをおすすめします!せりふも少しずつ変化していることが分かり、比較してみるのもおもしろいと思いますよ。

「黙阿弥全集 第四巻」(1934、春陽堂)

黙阿弥が書き下ろした作品の全集がそろった、大正13~15(1924~1926)年に出版された非売品の貴重な資料です。すべてに仮名が振られているので、役名や地名などを確認する際は、当時のものに一番近いこの書籍を手に取るのがいいかもしれません。

戸板康二(等)監修「名作歌舞伎全集 第十一巻」(1969、東京創元新社)

挿絵や昔の舞台写真(白黒)の掲載もあり、台本以外の項目でも楽しめます。十~十二巻は黙阿弥集になっていますので、ほかの演目のせりふを確認したいときもおすすめです。

河竹登志夫(編著)「蔦紅葉宇都谷峠 青砥稿花紅彩画 歌舞伎オン・ステージ 1」(1993、白水社)

単語の意味や解説が補足してあるので、せりふの内容を理解したい方はぜひこちらからどうぞ!巻末の芸談や解説も読むことで、演目の理解を深められます。

令和4年5月「弁天娘女男白浪」歌舞伎座上演台本<訂正台本>

実際に上演される際に使用されていた、台本を確認することができます。こちらは修正が加わった改訂版となります。

黙阿弥全集(全28巻)
令和4年5月『弁天娘女男白浪』歌舞伎座上演台本<訂正台本> p34 より引用 
*7音句ー5音句になるよう改行しています
*青字部分は台本上で訂正されている箇所です

編集部コメント

 娘に化けていた弁天小僧菊之助が、正体を見破られたときに放つこの「知らざぁ~」のせりふはとても有名ですね。現代の台本(令和4年5月上演)と、ご紹介いただいたほかの3つの資料とで比較したときに、このような違いを発見しました。

①「種は尽きねえ七里が浜」→「種はきざる七里ケ濱」(※1)
②「百味で散らす蒔銭を」→「江戸の百味講ひゃくみの蒔銭を」(※2)
③「菊之助たァ 俺が事だ」という最後の決めぜりふは「菊之助とはおれがこった」(※3)、「菊之助という小若衆さ」(※4) と、これまでさまざまな形で上演されて来たようです。

 令和4年5月の台本は「音羽屋」に修正されていますが、尾上菊五郎家が菊之助を演じる場合は、「祖父じいさん」というせりふで上演されることが多いようです。

 普段聞くせりふを文字で見ると、さまざまな発見がありますね。ほかの演目のせりふも、ぜひ調べてみてはいかがでしょうか。

(※1)「黙阿弥全集 第四巻」春陽堂, 1934, p339
(※2)「黙阿弥全集 第四巻」春陽堂, 1934, p339
(※3)河竹登志夫(編著)「蔦紅葉宇都谷峠 青砥稿花紅彩画 歌舞伎オン・ステージ 1」白水社, 1993, p310
(※4)戸板康二(等)監修「名作歌舞伎全集 第十一巻」東京創元新社,1969, p100

さらに黙阿弥のせりふの奥深さを知りたい方には、こちらの書籍もご紹介しています。

戸板康二「名セリフ言語学」(1983、駸々堂)

著者が“名せりふ”としてピックアップした160の歌舞伎のせりふを収めた書籍です。黙阿弥作品であれば、『弁天娘女男白浪』、『三人吉三巴白浪』、『梅雨小袖昔八丈』、『雪暮夜入谷畦道』などのせりふの一部が解説されています。

本田ゆたか “黙阿弥七五調のリズムとテンポ”「歌舞伎 研究と批評 5」歌舞伎学会編(1990、リブロポート)

歌舞伎学会の学会誌ということもあり、研究論文が掲載されているとても専門的な内容になっています。弁天小僧菊之助を演じてきた俳優たちの、せりふの朗誦を譜に落とし、黙阿弥の七五調を、リズムとテンポという音楽的側面から分析しています。

「歌舞伎名ぜりふ集 おおむ石」(1972、松竹演劇部)

「季刊雑誌歌舞伎」の別冊として発売された、歌舞伎の43作品のあらすじ、みどころ、名せりふが掲載された書籍です。難しい言葉や言い回しには注釈がついているため、読みやすい1冊です。

編集部コメント

 「おおむ石」とは、昔発行されていた歌舞伎のせりふ集のことを言い、本書籍はその現代版として作成されたものだそうです。
 松竹大谷図書館には、なんと明治時代の「おふむせき」も所蔵されていました!和紙に木版刷りで書かれたせりふとともに、鮮やかな色合いで役者の似顔絵も描かれていますので、気になる方はぜひ、図書館に足をお運びください。

「歌舞伎名ぜりふ集 おおむ石」
「山伏問答おふむせき」『勧進帳』明治5年3月守田座

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 レファレンスサービスを利用した結果、インターネット検索や図書館の資料検索で自力では探せないような資料をたくさんご紹介していただくことができました!
 具体的な質問やご要望のほうが、司書の皆さんも該当の資料を探しやすいとのことでしたので、歌舞伎をはじめ、演劇関連についてお調べの方はぜひご利用ください。

※遠方にお住まいで資料を直接ご覧いただけない方は、図書館がお調べしてご回答させていただくことも可能ですので、お問い合わせください


10月歌舞伎座上演『双蝶々曲輪日記』「角力場」台本紹介

 10月の歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」公演をもっと楽しむために、ご観劇前後に松竹大谷図書館で台本を読んでみてはいかがでしょうか?

最初に作成された台本(右)と、修正が入った訂正台本(左)
訂正台本(下)は手書きで修正箇所が記されています

※写真は令和2(2020)年10月公演の上演台本


松竹大谷図書館からのお知らせ

公益財団法人松竹大谷図書館 クラウドファンディングプロジェクト第12弾
開場100周年、大阪松竹座の歴史を紐解く資料を未来へ。

 松竹大谷図書館では、クラウドファンディングで貴重資料のデジタル化や保存プロジェクトに取り組み、毎年成果を上げています。今年度のプロジェクトは「開場 100 周年、大阪松竹座の歴史を紐解く資料を未来へ。」です。

 関西初の本格的な洋式劇場として大正12(1923)年5月に開場した大阪松竹座の開場 100 周年を機に、松竹大谷図書館が所蔵している貴重な資料を補修・デジタル化し、より良い状態で保存することで資料を守り、さらに将来にわたり広く活用していくことを目指すプロジェクトに挑戦します。
 詳しくはこちらをご確認ください。

『松竹座グラヒック』大正15(1926)年第4号第4巻より
『松竹座ニュース』昭和3(1928)年2月

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