歌舞伎いろは

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歌舞伎繚乱「春、京都、花形歌舞伎!」 京都四條南座「三月花形歌舞伎」
尾上右近の出演演目

『流星』織女
『弁天娘女男白浪』赤星十三郎
『闇梅百物語』小姓白梅/雪女郎

中村種之助の出演演目

『矢の根』曽我十郎祐成
『弁天娘女男白浪』鳶頭清次
『闇梅百物語』骸骨/読売

 ――今回の南座「三月花形歌舞伎」出演者七人中六人がご出演だった「新春浅草歌舞伎」について少しお話いただけますか。

種之助: 主な出演者が全員二十代だから、大変だろうとは十分に予想していたのですが、ずっしりとした責任の重さを感じたものでした。

隼 人: もちろん、大きなお役をいただいたというプレッシャーもあったけれど、これまではどんなときでも先輩がいらしてくださった。だから芝居にだけ打ち込むことができたと思うんです。でも、今回はどうやったらお客様が来てくださるのか、それを切実に考えなければならないという、すごく貴重な経験をさせていただいたと思います。

種之助: もちろん、お客様にはたくさん観てていただきたいし、そうなるように頑張らなければいけないのだけれど、加えて、舞台を楽しんでいただけるかどうかが、すべて僕らにかかっているんだと、身に染みて感じた公演でした。来てくださったお客様に「若いから」を言い訳にはできない。未熟であっても「面白かった!」と思って帰っていただかなければ…。

米 吉: いつもは必ず後ろに先輩方がいてくださるから、僕らは「勉強させていただきます」という気持ちでいられるのですよね。

隼 人: それは楽屋でも感じました。お稽古のときに教えていただいて、それでも初日が開いてから迷うこともあって、いつもなら父やおじ様たちにすぐにうかがうこともできるし、気にもしてくださるんです。今回、そういう環境がいかにありがたいものだったのかを痛感しました。

米 吉: そう。迷子みたいな気持ちになりかけたことはありました。自分で考えて自分で答えを出していくことの大変さ、すごくありましたよね。

種之助: ひと月やり通すことの大変さも。体力的にも精神的にも疲れてくる。そういうときでも、自分たちで流れをつくり直さなければならない。これまでは先輩方がつくられる流れに参加していただけだったのだと感じましたし、これからは流れを後押しできる存在になりたいとも思いました。

中村米吉の出演演目

『鳴神』雲の絶間姫
『弁天娘女男白浪』浜松屋伜宗之助
『闇梅百物語』新造

中村隼人の出演演目

『矢の根』大薩摩文太夫
『流星』牽牛
『弁天娘女男白浪』忠信利平
『闇梅百物語』河童

右 近: みんな、すごいと思います。僕はきっと、そういうことを考える余裕すらなくなる気がする…。

種之助: 右近君は熱中タイプだものね。

右 近: そうなんです。右も左もわからなくなるくらい熱中してしまうと思うんですよ。それで、お客様にはそれを見ていただけばいいのでは、と思うのではないかな。「新春浅草歌舞伎」も拝見したけれど、自分だったらどうやっただろうか、というのはずいぶん考えました。

 ――そして三月は京都。ところで京都の印象は?

隼 人: なんとはなしに歩いているだけでも歴史の重みを感じられところが、僕は好きです。歌舞伎発祥の地だからか、ほかの街で出演させていただくのとは違った身の引き締まり方がある気もします。

右 近: 「新春浅草歌舞伎」は、お客様も周辺の浅草の方たちも、イベント的な感じで盛り上げてくださるんですよね。京都はそれとはまったく雰囲気が違うと思います。さらに、京都のお客様は厳しい面もおありになるからね。

種之助: 「新春浅草歌舞伎」を経験したうえでの僕らを見ていただきたいと思っています。

 ――では最後に、隣の人の印象をひと言ずつお願いできますか。

種之助: では僕から。米吉君は「可愛い!」

米 吉: 隼人君は「いい男!」

隼 人: 右近君は「自由!」

右 近: 種之助君は「気が合う!」

米 吉: 四人で話していたらあっという間でしたね。まだまだ話したいことがいっぱいある気がするのだけれど。京都でまたやりませんか?

右 近 隼 人: やりましょう!

種之助: 決まりました(笑)。では3月にまたお目にかかれますように。

京都四條南座 松竹創業120周年 三月花形歌舞伎
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