
【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。
染五郎が楽屋で唄っている? しかも琵琶を弾きながら!
4月の歌舞伎座では昼の部の『操り三番叟』、『不知火検校』に出演しており、夜の部の『幻想神空海』では出演だけでなく、振付けも担当している染五郎。わずかな合間を縫って、中国琵琶の弾き語りの稽古を楽屋で行っています。初めて楽器を触ってから間もないにもかかわらず、着実に上達しているのはさすが。三味線とは指使いが違って難しいと言いつつ、初日までにはお客様にご覧いただけるようにならなくてはと、奮闘している姿を特別に公開させていただきます。自分で調弦をし、弦が切れればそれを張り替え…、その姿は演奏家そのもの!
染五郎が歌舞伎座で唄声を披露するのは、実は初めてのこと。緊張しながらも、本番に向けて艶のある甘い声を響かせます。本番の舞台では松也をはじめほかの出演者との重唱もあるかも!? 唄う染五郎の進化にご期待ください。
空海の熱唱! 本人のコメントもぜひお聞きください。
大道具の飾り込みの様子をご紹介。歌舞伎座の間口いっぱい、世界最大級の廻り舞台いっぱいに飾られた柱、柱、柱。いつもの色とは違う、黄砂が吹き付けられたような朱色の柱、歌舞伎座の舞台に唐の都長安の風が吹きわたります。これが、ぐるぐると廻りながら場面が展開し、小説のスケール感が見事に表現されていきます。ここにさまざまな仕掛けをして、台本のト書きで表現される「あっという間に現れる」や、「いずくともなく消える」を実現するのですが、その様子は本番の舞台を見てのお楽しみ。いずれにせよ、誰も見たことのない舞台が、お客様の前に出現することだけは確かです!
林立する柱(写真1)。見上げれば吊られたパネルが何枚も。廻り舞台で柱の位置を変え、吊っている道具を下ろし、あっという間に場面が転換。そして、セリの上げ下げ(写真2)。セリに仕込まれた道具にはいろいろな仕掛けが、おもちゃ箱のように詰まっています。歌舞伎座では珍しいペルシャ絨毯(写真3)が敷かれ、…さて夢枕ワールドの開幕というところでございます!
新作歌舞伎の楽しみ方は人それぞれ、でも、ここを押さえておくと見逃さずに楽しめる“物語の鍵”を追いながら、初日の舞台をご紹介しましょう。
まずは「楊貴妃」。幕開きに幻想的に登場するのは、先月、五代目を襲名したばかりの雀右衛門で、先代を彷彿させる唐風の姿で艶やかに舞います。この序章のシーンは後からなるほど!と思わせる要素がいっぱい。目を凝らしてご覧ください。
空海と橘逸勢(はやなり)の「掛け合い」。二人の会話は芝居のテンポを生み出します。超人的な才を飄々と見せていく空海の、人間的な弱さや野心などを描き出していくのが逸勢で、二人のやりとりに客席が沸くこともたびたびでした。
「廻り舞台とセリ」。歌舞伎の手法を駆使し、時間と空間を自由に移動して賑やかな唐の市場から妓楼へ、屋敷の中へ、空海の部屋へ…。さらに、手紙に書かれた50年前の出来事は、劇中劇で見せます。時空を超えて広がる夢枕ワールドが歌舞伎の手法で表現されていますが、その見え方は古典の歌舞伎とはちょっと違ってとても新鮮、ぜひ客席で体感してください。
一方、夢枕ワールドの妖しげな部分のキーワードは「猫」。せりふのなかに“化け猫”と聞こえたら要注意、さまざまな事件の陰に猫あり、そこから何かが起こります。以上の4つのキーポイントに注目すると、歌舞伎座の舞台に広がるスケールの大きな物語の世界でも、迷うことなく『幻想神空海』が楽しめます。
初日終演後、そのまま取材に駆けつけた空海と逸勢。舞台の熱が取材陣にも伝わってきました!
4月2日(土)の夜、終演後に空海役の染五郎と逸勢役の松也が、囲み取材にて答えました。「夢枕さんのファンタジー、いろいろなものが混ざり合った世界をどうやって舞台で成立させるのかが難しかった」と、稽古を振り返った染五郎。「歌舞伎ならではの演出、歌舞伎だからこその空海というものが出せるのでは、と稽古してきました」と松也も続けます。
空海と逸勢、二人の醸し出す雰囲気は、稽古中の試行錯誤から生まれたと言います。「さまざまな試みに、染五郎にいさんが素早く反応してくださる。新作でまだまだ未知数ですから、なんでも試してやってみていました」と松也が言うと、染五郎は「可能性を探り、試みて初日を迎えないといけませんから」とうなずき、幕が開いた初日をスタート地点として、さらに進化させると意欲を見せました。
歌舞伎繚乱
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