歌舞伎いろは

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歌舞伎繚乱
ともだちなのにおいしそう? ぷるぷるぷる!新作歌舞伎『あらしのよるに』――後編 京の舞台に起こった予想外のドラマ――
見ているうちに動物たちの世界に入り込んでしまう、ヤギの動きが愛くるしい、オオカミも怖いけど面白い…。予想もつかなかった舞台は、開けてみれば思いもよらないドラマの連続!みい姫とたぷ、梅枝さんと萬太郎さん兄弟が『あらしのよるに』について話します。
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京都四條南座「九月花形歌舞伎」

インタビュー・文:矢口由紀子 絵:あべ弘士 写真:松竹株式会社 構成:歌舞伎美人編集部

中村梅枝

中村梅枝
(なかむら ばいし)

中村梅枝

萬屋
昭和62年11月22日生まれ。中村時蔵の長男。
平成3年6月歌舞伎座『人情裏長屋』鶴之助で初お目見得。6年6月歌舞伎座『幡随長兵衛』の倅長松、『道行旅路の嫁入』旅の若者で四代目中村梅枝を名のり初舞台。

中村萬太郎

中村萬太郎
(なかむら まんたろう)

中村萬太郎

萬屋
平成元年5月12日生まれ。中村時蔵の二男。
6年6月歌舞伎座『道行旅路の嫁入』旅の若者で初代中村萬太郎を名のり初舞台。

みい姫(梅枝)は、たぷ(萬太郎)とはく(竹松)を伴って登場。
がぶ(獅童)、めい(松也)、真っ暗な“あらしのよるに”出会います。
ぎろ(月乃助)がみい姫を折檻! 『金閣寺』の雪姫のようなみい姫。

 梅枝さんと萬太郎さんにお話をうかがおうと南座にやってきました。初日が開いて間もなくのこの日、先ほどまでの客席の喝采の余韻が残る中、インタビューがスタートしました。

 ――客席の様子は舞台の上でもおわかりになりましたか。

梅 枝: はい。僕が出る場面は暗いことが多いので、客席はあまり見えないのですが、それでもお客様の反応はよくわかります。

萬太郎: お客様の反応がすごくて、ちょっとびっくりしているくらいです。

 ――そもそも、『あらしのよるに』という絵本はご存じでしたか。

萬太郎: 僕は、映画版のCMを見て知りました。出演が決まってから、読ませてもいただきました。

梅 枝: 僕は知りませんでした。

萬太郎: 兄は何事も、先入観を持ちたくないタイプだから。それでいて、質問はするんですよ。自分が演じるのはどんなキャラクターなのかとか、大筋、どんな話なのかとか。

梅 枝: それで少し心配になったのは、今回の芝居ではオオカミは敵役に設定されているんです。でも原作では善悪に色分けされていない。歌舞伎は勧善懲悪のほうが盛り上がるのでそれでいいのだと思いますが、原作を知る方がご覧になったらどうお感じになるのかと。初日が開くまではちょっと不安でした。

萬太郎: ありがたいことにまったくの杞憂でしたが。歌舞伎をよくご覧になる方からは「やっぱり歌舞伎だね」と言っていただきましたし、初めてご覧になる方には「歌舞伎ってこういうものなんだ」と。どちらもシンプルに楽しんでくださっているようで、うれしいです。

 ――梅枝さんはみい姫というヤギのお姫様役。萬太郎さんは、みい姫と松也さん演じるめいと兄弟のように育ったヤギのたぷを演じていらっしゃいます。お二人は菊五郎劇団の復活狂言などで、これまでにも芝居をつくる経験がたくさんおありですが、今回、これまでと違う点はありましたか。

萬太郎: 僕はけっこう大変でした。ご宗家(演出の藤間勘十郎)の頭の中では全部でき上がっていらしたんだと思いますが、稽古初日から台本が変わっていったので、たぷという役の着地点がなかなかつかめなかったんです。それと、劇団だと大先輩がたくさんいらっしゃいますから、それについていけばいいんですが、今回は自分でつくっていかなければならない部分が多かったので、大変ではありました。その分、楽しかったんですけれどね。

梅 枝: ヤギは皆、つかむまでに時間がかかったかもしれないですね。オオカミは見た目がまさにオオカミ。それに比べるとヤギは見た目の印象が薄いですから。ことに僕は「古典のお姫様で」というご指示だったので、少し戸惑いました。芝居の仕方もビジュアルも、自分だけ完全に毛色が違いますから、初日が開いてからも「お客様に自分もヤギだとわかってもらえているかな」という不安がよぎることはありました。

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