歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎繚乱
ともだちなのにおいしそう? ぷるぷるぷる!新作歌舞伎『あらしのよるに』――後編 京の舞台に起こった予想外のドラマ――
力ではかなわなくても頭で勝つ! はくの発明品で勢いづくヤギたち。
がぶとめい、月に向かって駈け上がる。やがて二匹の運命が変わる…。

 ――それぞれのビジュアルも楽しいと評判ですが、衣裳や鬘(かつら)、化粧にはどのような工夫をされましたか。

梅 枝: オオカミは衣裳と鬘がオオカミとわかりやすいし、顔もミュージカル『キャッツ』の猫みたいに楽しんでつくっているし。

萬太郎: ヤギの鬘は、歌舞伎の舞台では“みずら”といわれている形です。顔の両脇にある束ねた髪で角をイメージしています。衣裳は邪馬台国人みたいなので、ヤギを思わせる何かがあったほうがいいのではと、鼻の下を割る(筋を入れる)ことにしました。いつもの歌舞伎でも動物を演じるときにやりますが、一本、紅を入れるだけでずいぶん違う感じになります。

梅 枝: 僕は普通のお姫様の拵え(こしらえ)です。鬘も普通ですし、顔もいつもどおり。ただ、髪飾りを両脇二つにして、耳っぽくしました。ヤギの衣裳にはフリンジが施されていて、ヤギらしさを表しているんです。

萬太郎: 僕らはたっつけに足袋ですから、普段よりも動きやすいくらいです。

 ――具体的な演技についてはいかがでしょう。動物を演じるということで、いつもとは違う工夫をされたのでしょうか。

萬太郎: リスとウサギは最初から動物っぽかったのですが、僕らヤギはあまりやらなくていいというお話だったんです。でも、稽古を重ねるうち、いや、なにかやったほうが楽しくなるのではということになり、要所要所でヤギっぽい手にしたり、僕の花道の引込みも、狐のようにしてみました。

梅 枝: 最初は駆けて引込むだけだったものね。僕もヤギらしい何かをと思ったんですが、ご宗家も獅童兄さんも「お姫様はいいの」、ということになりました。

最後はみい姫も穏やかな笑顔です。

 ――そういった演技方法を含め、いつもの歌舞伎とは違うつくりになっていると思うのですが、それでも「やっぱり歌舞伎だね」という感想を多く耳にします。演じ手としてはどのように感じていらっしゃいますか。

萬太郎: 全体的に歌舞伎の要素、様式がとても上手く使われていると思います。僕が特に感じたのは音楽ですね。長唄や義太夫がとても効果的に使われています。

梅 枝: 義太夫さんの入り方は本当に面白いです。特に最後。もちろん、獅童兄さんの芝居の仕方もありますが、音楽だけでも、がぶがどういう状況にあるのかがわかるんです。僕がいつもと大きく違うなと感じているのは舞台転換。出入りが多く、場面数も多い。その中でオオカミの世界とヤギの世界を音と照明だけで換えて見せる。こういうやり方もあるのだと感動しました。

萬太郎: 僕は、獅童さんと松也さんの芝居に感動しています。もう、がぶとめいはお二人以外に考えられない。

梅 枝: 本当にそうです。お二人は歌舞伎以外の場所でもたくさんの経験がおありだけど、それをすんなり歌舞伎にできるんですよね。ほんと、すごいと思います。

萬太郎: いろいろな引き出しがいっぱいあるのだと思いました。そういう勉強も、今回はたくさんさせていただいています。

 ――では最後に、これからご覧になろうと思っている方へ。

梅 枝: 初日が開いて数日で「この作品はきっと再演される」と確信しました。といっても今の『あらしのよるに』は今しかご覧になれません。ぜひ、劇場でご覧になってください。

萬太郎: 僕らの想像を超えて面白く、楽しい作品になりました。それはお客様の反応が育ててくれた部分も大きいと思います。ですから、劇場にいらしてください!

京都四條南座 松竹創業120周年「九月花形歌舞伎」 平成27年9月3日(木)~26日(土) 新作歌舞伎『あらしのよるに』
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