歌舞伎いろは

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歌舞伎座「二月大歌舞伎」『新書太閤記』 菊五郎さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 尾上菊五郎

膨大なせりふに泣かされる

 ――2月の公演、昼の部の『新書太閤記』はとにかく出演者が多いですね。

 ほとんど全員が出演するのではないでしょうか。二役を演じる俳優も多い。そういう場合には、なるべく毛色の異なる役を配するようになっています。若い人には、今まで演じたことのない系統の役柄をやってもらおうかと考えたりもしています。

 ――長編の新作で出演場面も多いので、せりふを覚えるご苦労もおありでしょう。

 作者には、面白く、簡潔に、ドラマティックにと注文を出しています。私も国立劇場の正月公演などで復活作品を手がけることが多く、そのときは毎回のように演出もさせてもらっている関係上、いただいた台本を読んでいても、どうしてもこれは無理じゃないかと考えてしまったりするので、せりふ覚えがなかなか捗らないんですよ。

 たとえば、「草鞋を履いて飛んで行く」とト書きにあったとします。実際は、そんなに早く舞台で草鞋を履けっこありません。一度履くか、あるいは履かないで飛び出したほうが、切迫感が出ていいのか、といろいろ考えるうちに眠くなってね。いったん寝て、目が覚めた深夜にまたせりふを一人で覚え、もう一度寝て明け方に起きたときに、またページを繰ったりしています。膨大な量のために泣かされていますよ。

 ――夜の部では古典作品の『籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)』の繁山栄之丞をなさいます。 

 栄之丞は、昭和57(1982)年4月に新橋演舞場で演じて以来、2度目です。そのときは成駒屋のおじさん(六世中村歌右衛門)の八ツ橋、(十七世中村)勘三郎のおじさんの次郎左衛門でした。

 栄之丞は(十四世守田)勘弥のおじさんがよかったですねえ。八ツ橋という花魁の間夫(まぶ)で、思慮が足りない。色男ではありますが、片方の次郎左衛門があばた面ですから、それほどきれいに真っ白に顔を塗らなくても対比が出ます。

 “銀流し”(銀メッキのように見掛け倒しの意)ですが、いちおう女性を惚れさせなければならない。八ツ橋に仕送りもしてもらっているんだろうしね。『雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)』の片岡直次郎とも共通するような面もありますが、あまり深く掘り下げないほうがいい役でしょう。雰囲気として栄之丞が出ればいいのですが、それがまた難しいんですよ。

尾上菊五郎 音羽屋!

尾上菊五郎さんをもっと知りたい!

尾上菊五郎(おのえ きくごろう)

生まれ 昭和17年(1942年)10月2日生まれ。
家族 七代目尾上梅幸の長男、息子は五代目尾上菊之助。
初舞台 昭和23年4月新橋演舞場『助六曲輪菊(すけろくくるわのももよぐさ)』禿(かむろ)で五代目尾上丑之助を名のり初舞台。
襲名 昭和40年5月歌舞伎座『寿曽我対面』曽我十郎祐成、『君が代松竹梅』松の君ほかで四代目尾上菊之助を襲名。
48年10・11月歌舞伎座『弁天娘女男白浪』弁天小僧菊之助、『京鹿子娘道成寺』白拍子花子、『本朝廿四孝』息女八重垣姫、『助六曲輪菊』花川戸助六ほかで七代目尾上菊五郎を襲名。
受賞 昭和60年度芸術選奨文部大臣賞。61年度日本芸術院賞、芸術祭賞。平成12年日本芸術院会員。15年重要無形文化財各個指定(人間国宝)。21年毎日芸術賞。27年文化功労者ほか、受賞、受章多数。
この一年の舞台

平成27年

2月 「二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『彦山権現誓助剱』毛谷村六助/『神田祭』鳶頭菊吉
4月 「四月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『六歌仙容彩』「喜撰」喜撰法師/『成駒家歌舞伎賑』木挽町座元音羽屋菊五郎
5月 「團菊祭五月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『天一坊大岡政談』大岡越前守/『神明恵和合取組』め組浜松町辰五郎
6月 「六月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『新薄雪物語』「花見」奴妻平・「詮議」葛城民部/『夕顔棚』婆
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『人情噺文七元結』左官長兵衛/『梅雨小袖昔八丈』肴売新吉
11月 「吉例顔見世大歌舞伎」(歌舞伎座)
『曽我綉?御所染』御所五郎蔵/『江戸花成田面影』町年寄音羽屋菊五郎

平成28年

1月 平成28年初春歌舞伎公演「通し狂言 小春穏沖津白浪 -小狐礼三-」(国立劇場)
『小春穏沖津白浪 -小狐礼三-』日本駄右衛門

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