歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」『十六夜清心』『三人吉三巴白浪』
菊之助さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 尾上菊之助

今となってわかった、父のあのときの気持ち

 ――夜の部の『勢獅子音羽花籠(きおいじしおとわのはなかご)』では、菊之助さんの長男の和史さんが初お目見得をなさいます。『勢獅子』には菊五郎さん、(中村)吉右衛門さんという和史さんの二人のお祖父様も鳶頭で出演されます。

 『勢獅子』は常磐津の華やかな曲で、派手で面白い踊りです。諸先輩、関係者の皆様のお許しをいただき、和史も出演させていただけるのはありがたいことです。今のところ、私が手を引いて花道から出る予定です。和史と一緒の取材がありましたが、自分一人のときよりも緊張し、「しゃべれるかな」「泣いたりしないかな」と心配でした。

 ――将来なりたいものを尋ねられ、「とと」とおっしゃっていました。お父様のようになりたいという憧れが感じられました。

 名前を聞かれて「てらじまかずふみでしゅ」と、小さな声で言っていました。好きな食べ物は「ブロッコリーとカボチャ」と答えていました。納豆も好きですね。家では私が弁天小僧の格好をすると傘を持ってきて真似ています。おもちゃの刀で遊ぶのも好きです。

 ――菊之助さんの初舞台は昭和59(1984)年2月歌舞伎座の『絵本牛若丸』で、お父様の菊五郎さん、お祖父様の(尾上)梅幸さんも出演されました。

 祖父は手放しで喜んでいたし、私は何もわかりませんでした。父が一人でやきもきしていたんだろうなと、今になってよくわかります。

 ――この5月はほかに、昼の部で『寺子屋』の千代、夜の部では『男女道成寺』の白拍子花子も演じられます。

 千代は東京では初めてです。初演では(坂東)玉三郎のおにいさんに教えていただきました。我が子を失った母の悲しみをお伝えできればと思います。

 「道成寺」物の魅力は、歌詞、曲、振りのすべてが優れている点にあると思います。『男女道成寺』は、初演(平成6年5月歌舞伎座)で父と勤め、その後、今回と同じ海老蔵さんと踊りました(平成8年正月浅草公会堂)。『娘道成寺』では、架空の男性を想定して踊る「恋の手習」に、実際に男性がいるのが『男女道成寺』の面白さの一つです。お客様の目にも歌詞の意味が伝わりやすいと思いますので、楽しんでご覧いただきたいです。

尾上菊之助 音羽屋!

尾上菊之助さんをもっと知りたい!

尾上菊之助(おのえ きくのすけ)

生まれ 昭和52年8月1日、東京都生まれ。
家族 七代目尾上菊五郎の長男。祖父は七代目尾上梅幸。母は女優の富司純子、姉は女優の寺島しのぶ。
初舞台 昭和59年2月歌舞伎座『絵本牛若丸』牛若丸で六代目尾上丑之助を名のり初舞台。
襲名 平成8年5月歌舞伎座『弁天娘女男白浪』弁天小僧菊之助、『鏡獅子』小姓弥生・獅子の精で五代目尾上菊之助を襲名。
受賞 平成8年浅草芸能大賞新人賞。同14年度松尾芸能賞新人賞。同17年読売演劇大賞杉村春子賞、朝日舞台芸術賞寺山修司賞。同17年度芸術選奨文部科学大臣新人賞ほか受賞多数。
この一年の舞台

平成27年

5月 「團菊祭五月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『摂州合邦辻』玉手御前/『天一坊大岡政談』天一坊/『慶安太平記』松平伊豆守/『神明恵和合取組』柴井町藤松
7月 「平成27年7月歌舞伎鑑賞教室「義経千本桜」(国立劇場ほか)
『義経千本桜」「渡海屋の場」「大物浦の場」渡海屋銀平実は新中納言知盛
9月 「秀山祭九月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『競伊勢物語』娘信夫・井筒姫/『伽羅先代萩』「竹の間」「御殿」沖の井
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『一條大蔵譚』吉岡鬼次郎/『壇浦兜軍記』秩父庄司重忠
11月 平成27年11月「松竹大歌舞伎」(秋季公演)
『魚屋宗五郎』魚屋宗五郎

平成28年

1月 平成28年1月歌舞伎公演「通し狂言 小春穏沖津白浪 -小狐礼三-」(国立劇場)
『小春穏沖津白浪』小狐礼三
2月 「二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『新書太閤記』濃姫/『籠釣瓶花街酔醒』兵庫屋八ツ橋
3月 「三月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『女戻駕』浪花屋おきく/『双蝶々曲輪日記』「角力場」山崎屋与五郎・放駒長吉
4月 「明治座 四月花形歌舞伎」(明治座)
『女殺油地獄』河内屋与兵衛/『浮かれ心中』おすず/『二人椀久』椀屋久兵衛

ようこそ歌舞伎へ

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