歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「六月大歌舞伎」『義経千本桜』
染五郎さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 市川染五郎

何ができるかではなく、何がしたいかが先に立つ

 ――5月3日から5日間、米ネバダ州・ラスベガスのMGMグランドのデヴィッド・カッパーフィールド劇場で『KABUKI LION 獅子王』の公演をされました。

 どっぷり歌舞伎をつくるという日々を過ごせたのは幸せだと思います。今回は劇場でしたが、昨年は人工池の中につくった舞台での上演でした。大きな池の中では小さく見えた舞台が、本当は歌舞伎座の舞台と同じ大きさだと聞き、池の大きさを実感しました。

 僕らは、新しいものをつくるときは、その条件で何ができるかを考えますが、アメリカでは何がしたいかが先で、そこに向かっていく。その技術がないならば、発明しようという発想です。だからこそ、大きな池や何百メートルも吹き上がる噴水ができるのでしょう。今回は、何がしたいかを忘れずに向こうに乗り込み、形にするのに苦労しました。

 初めてツケを打つ瞬間、女方が出てくる瞬間、黒衣が出てくる瞬間を、なるべく強調して作品をつくりました。若手の歌昇君、廣太郎君、隼人君には立廻りの多い役を演じてもらいました。やったことのないことをやるというよりは、きっちりと歌舞伎をやる感じでした。それが世界に歌舞伎を伝える最良の手段ではないかと思いました。

歌舞伎を外国でも一つのジャンルとして成立させたい

 ――観客の反応はいかがでしたか。

 見たことも聞いたこともない、演出、音楽、声だったと思うのですが、それに緊張することなく、さあ楽しみに来たぞという感覚をお持ちのように思いました。

 ――また海外公演をなさりたいですか。

 現地でショーもたくさん見ました。歌舞伎では、トリッキーな演出をするにしても芝居の本筋からは逸脱しないようにします。早替りにしてもドラマのなかに矛盾なく入れる。そういうつくり方は現地のショーにはなかったような気がします。

 歌舞伎という演出を外国でも一つのジャンルとして成立させたい。昭和の後半で、歌舞伎はほぼ全世界を周りました。歌舞伎の専用劇場は日本にしかないので、日本に歌舞伎を見に来ていただくためにはどうしたらいいかを考えたいです。そして歌舞伎を海外で上演する際には、海外の人に演じてもらいたい。世界中の人たちに歌舞伎という演劇、ショーをやってもらいたい。今回の公演が、そこにつながる第一歩になればと思います。

市川染五郎 高麗屋!

市川染五郎さんをもっと知りたい!

市川染五郎(いちかわ そめごろう)

生まれ 昭和48年1月8日、東京生まれ。
家族 父は九代目松本幸四郎、息子は四代目松本金太郎。姉は女優の松本紀保、妹は女優の松たか子。
初舞台 昭和54年3月歌舞伎座『俠客春雨傘(きょうかくはるさめがさ)』松本金太郎で三代目松本金太郎を名のり初舞台。
襲名 昭和56年10月歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』「七段目」大星力弥、11月『助六曲輪江戸桜』福山かつぎで七代目市川染五郎を襲名。舞踊では平成7年4月に松本流家元・三代目松本錦升を襲名。
この一年の舞台

平成27年

7月 「歌舞伎NEXT 阿弖流為」(新橋演舞場)
『阿弖流為』阿弖流為
8月 「KABUKI Spectacle at FOUNTAINS OF BELLAGIO」 (ベラージオの噴水)
『鯉つかみ “Fight with a Carp”』滝窓志賀之助
9月 「秀山祭九月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『紅葉狩』更科姫実は戸隠山の鬼女/『競伊勢物語』絹売豆四郎・在原業平/『伽羅先代萩』「対決・刃傷」細川勝元
10月 「歌舞伎NEXT 阿弖流為」(大阪松竹座)
『阿弖流為』阿弖流為
11月 「吉例顔見世大歌舞伎」(歌舞伎座)
『実盛物語』斎藤実盛/『江戸花成田面影』鳶頭染吉/『勧進帳』富樫左衛門
12月 平成27年12月歌舞伎公演「通し狂言 東海道四谷怪談」
『東海道四谷怪談』伊右衛門妻お岩・小仏小平・小間物屋与七実は佐藤与茂七・大星由良之助・鶴屋南北

平成28年

1月 「壽初春大歌舞伎」(歌舞伎座)
『廓三番叟』太鼓持藤中/『雪暮夜入谷畦道』片岡直次郎
4月 「四月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『松寿操り三番叟』三番叟/『不知火検校』生首の次郎後に手引の幸吉/『幻想神空海』空海
5月 「Wonder KABUKI Spectacle at MGM Grand」
(デヴィッド・カッパーフィールド劇場)
『KABUKI LION 獅子王』朱雀君実は鵺の化身・荒獅子高麗之助照薫・唐獅子山三実は獅子王の臣・虹屋金魚太夫・獅子王の精

ようこそ歌舞伎へ

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