歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「二月大歌舞伎」『一條大蔵譚』
十代目幸四郎さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 

大一座で襲名披露ができるありがたさ

 ――前回と長成の衣裳を変えられるとうかがいました。

 叔父(吉右衛門)が曾祖父(初代吉右衛門)の写真や資料から起こしてつくった衣裳を着ます。

 ――初代吉右衛門さんはお祖母様の父。幸四郎さんにとってはどんな存在ですか。

 聞いた話ですが、初代吉右衛門のファンどうしが、どの役が好きかで盛り上がったときのことです。ある人は初代は時代物がいいと言い、ある人は世話物がいい、ある人は踊りがいいんだと言って、互いに譲らず喧嘩になったそうです。つまり、それぐらい当り役が多かったんですよね。

 時代物のイメージが強く、もちろん『熊谷陣屋』や『一條大蔵譚』が素晴らしかったわけですが、『法界坊』や『らくだ』のような作品も大変によかった。東京では『封印切』も初代吉右衛門が演じていました。私も『らくだ』のような作品を楽しみながらできるような役者になりたいし、目指すところだと思っています。

 ――襲名興行の最中でいらっしゃいますが、どんな感想をお持ちですか。

 襲名の大変さは、後々もっと感じることだと思いますが、一生に一度の襲名興行をこの大一座でやらせていただけるありがたさを噛みしめています。大事に勤めていこうと思います。『勧進帳』で、私は叔父の富樫をずっと見て育ちました。その富樫がビデオではなく、私の演じる弁慶の前にいる、ということのありがたさと言ったらありません。関守の富樫は大人物だと思います。弁慶としてぶつかっていくしかないですね。

 ――息子さんの染五郎さんには、どんな思いをお持ちですか。

 襲名できることを幸せだと思い、頑張ってもらいたいです。

高麗屋!

十代目 松本幸四郎さんをもっと知りたい!

十代目 松本幸四郎(まつもと こうしろう)

生まれ 昭和48年1月8日、東京生まれ。
家族 父は九代目幸四郎改め二代目松本白鸚。息子は金太郎改め八代目市川染五郎。姉は女優の松本紀保、妹は女優の松たか子。
初舞台 昭和54年3月歌舞伎座『?客春雨傘(きょうかくはるさめがさ)』松本金太郎で三代目松本金太郎を名のり初舞台。
襲名 昭和56年10月歌舞伎座『仮名手本忠臣蔵』「七段目」大星力弥、11月『助六曲輪江戸桜』福山かつぎで七代目市川染五郎を襲名。舞踊では平成7年4月に松本流家元・三代目松本錦升を襲名。同30年1・2月歌舞伎座『車引』松王丸、『勧進帳』武蔵坊弁慶、『一條大蔵譚』一條大蔵長成、『熊谷陣屋』熊谷次郎直実ほかで十代目松本幸四郎を襲名。
この一年の舞台

平成29年

2月 「猿若祭二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『門出二人桃太郎』犬彦/『梅ごよみ』丹次郎
4月 「四月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『伊勢音頭恋寝刃』福岡貢/『一谷嫩軍記』「熊谷陣屋」源義経/『桂川連理柵』長右衛門弟儀兵衛
7月 「七月大歌舞伎」(大阪松竹座)
『夏祭浪花鑑』団七九郎兵衛/『盟三五大切』笹野屋三五郎
8月 「八月納涼歌舞伎」(歌舞伎座)
『刺青奇偶』鮫の政五郎/『歌舞伎座捕物帖』弥次郎兵衛/『野田版 桜の森の満開の下』オオアマ
9月 「秀山祭九月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『彦山権現誓助剱』毛谷村六助/『極付幡随長兵衛』水野十郎左衛門/『再桜遇清水』清水法師清玄・奴浪平
11月 「吉例顔見世大歌舞伎」(歌舞伎座)
『鯉つかみ』滝窓志賀之助実は鯉の精・滝窓志賀之助/『仮名手本忠臣蔵』「五段目」斧定九郎/『大石最後の一日』磯貝十郎左衛門

平成30年

1月 「壽 初春大歌舞伎」(歌舞伎座)
『菅原伝授手習鑑』「車引」松王丸/襲名披露「口上」/『勧進帳』武蔵坊弁慶

ようこそ歌舞伎へ

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