歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」『弁天娘女男白浪』
菊五郎さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 尾上菊五郎

自前の煙管は十数本

 ――孫の寺嶋眞秀さんが浜松屋の丁稚にご出演です。昨年、團菊祭の『魚屋宗五郎』の丁稚に出られて以来です。

 娘の(寺島)しのぶが、「お祖父様の弁天小僧で絶対にやらせて欲しい」というのでね。今、お稽古中です。子役の指導の先生に見ていただいています。教える方が上手ですから大丈夫でしょう。

 ――これまでの公演での思い出などがあればお教えください。

 巡業先での出来事ですが、衣裳に蜂が入っていました。汗をかくので、衣裳を外に干している間に入り込んだようです。「浜松屋」で、身体に痛みを感じ、煙管の火が飛んだのかと思ったら、蜂が刺していました。激痛を堪えながら舞台を勤めました。

 浜松屋を去るときに、弁天小僧は女の頭を隠すため、鳶頭の落としていった手拭いを被るのですが、鳶頭が手拭いを火鉢に落としてしまったことがありました。燃えて煙が出てきましてね。そのときは弟子が後ろから出してくれた手拭いを使いました。違った劇場に行くたびにやらせていただきましたから、思い出はいっぱいありますよ。

 ――小道具でご自分の自前の物はありますか。

 煙管は自前です。十数本持っています。若い頃は慣れるために、煙管で煙草を吸ったこともあります。最近は稽古に入ってから持つくらいですが。

 ――弁天小僧は極楽寺の屋根で立腹を切ります。大道具の屋根が、「がんどう返し」で背後に返り、垂直になります。弁天小僧は直立したままですね。

 上から落ちていくから、足の裏が摩擦熱で痛くなりますよ。ですが、本当に大変なときは自分で滑り下りますから、大丈夫です。五代目さんは丁字型の木の杭を打ち、よっかかって勤めたのが最後だと聞いております。 

音羽屋!

尾上菊五郎さんをもっと知りたい!

七代目 尾上菊五郎(おのえ きくごろう)

生まれ 昭和17年(1942年)10月2日生まれ。
家族 七代目尾上梅幸の長男、息子は五代目尾上菊之助。寺嶋眞秀、寺嶋和史は孫にあたる。
初舞台 昭和23年4月新橋演舞場『助六曲輪菊(すけろくくるわのももよぐさ)』禿(かむろ)で五代目尾上丑之助を名のり初舞台。
襲名 昭和40年5月歌舞伎座『寿曽我対面』曽我十郎祐成、『君が代松竹梅』松の君ほかで四代目尾上菊之助を襲名。
48年10・11月歌舞伎座『弁天娘女男白浪』弁天小僧菊之助、『京鹿子娘道成寺』白拍子花子、『本朝廿四孝』息女八重垣姫、『助六曲輪菊』花川戸助六ほかで七代目尾上菊五郎を襲名。
受賞、受章 昭和60年度芸術選奨文部大臣賞。61年度日本芸術院賞、芸術祭賞。平成12年日本芸術院会員。15年重要無形文化財各個指定(人間国宝)。21年毎日芸術賞。27年文化功労者ほか、受賞、受章多数。
この一年の舞台

平成29年

5月 「團菊祭五月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『魚屋宗五郎』魚屋宗五郎/『壽曽我対面』工藤祐経
6月 「六月博多座大歌舞伎」(博多座)
『毛谷村』毛谷村六助
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『マハーバーラタ戦記』那羅延天・仙人久理修那
11月 「吉例顔見世大歌舞伎」(歌舞伎座)
『雪暮夜入谷畦道』片岡直次郎

平成30年

1月 「平成30年初春歌舞伎公演」(国立劇場)
『世界花小栗判官』盗賊風間八郎
2月 「二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『熊谷陣屋』源義経/『壽三代歌舞伎賑』木挽町座元
4月 「四月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『裏表先代萩』下男小助・仁木弾正

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