歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「八月納涼歌舞伎」『盟三五大切』
七之助さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 中村七之助

歌舞伎と落語、再び新作で

 ――第一部では新作歌舞伎の『心中月夜星野屋』のおたかを演じられます。

 落語の『星野屋』とほとんど似たようなお話で、おたかは、したたかな女です。去年、第一部で中車さんと『刺青奇遇(いれずみちょうはん)』をやらせていただき、今年もまた中車さんと何かやりたいなと思っていました。そこで、一昨年の「納涼歌舞伎」で演じた新作落語が原作の『廓噺山名屋浦里(さとのうわさやまなやうらざと)』で知り合った小佐田定雄さんにご連絡をし、何作か候補があったなかから皆で選びました。

 ――母親のお熊は獅童さんですね。

 獅童さんは真面目にやって面白いところと、爆発的な感じがうまく噛みあうんじゃないかなと思いました。獅童さんに女方をさせるという楽しさではなく、女方もずっとやっていらしたので、絶対に大丈夫だろうと思いました。

 ――落語を原作にした歌舞伎には、『文七元結』『芝浜』『牡丹燈籠』『乳房榎』『らくだ』などがあります。

 落語は座布団に座って長屋の話をすれば、うまい人なら匂いまでしてきます。芝居には道具もあり、視覚的な分、落語よりも幅が狭まるのではないかという怖さもありますが、一方で動きや掛け合いで楽しませることもできます。歌舞伎は、道具や衣裳、鳴物などは先人たちのつくってきた素晴らしいものがあるので、すぐに新作にも対応できます。あとは本と役者の役へのアプローチですね。

父と三津五郎のおじ様に顔向けできないひと月にはしたくない

 ――第二部では『東海道中膝栗毛』で女医羽笠と鬼塚波七の2役を勤められます。

 前回は羽笠だけでしたが、ただ出てすぐ引っ込むだけで、こういう役は一番難しいなと思いました。ですから今回は作品に絡ませてとお願いしています。波七は、多分男なんでしょう。波七のネーミングは、僕の本名の波野の波と、七之助の七からとったんでしょう。

 ――「納涼歌舞伎」にはどんな思いをお持ちですか。

 納涼は小さいときから、父と(十世)三津五郎のおじ様、福助の叔父、芝翫の叔父が一所懸命に何かをつくろうという精神、魂でやってきたのを間近で見ていました。舞台になれば、あの四人のいい俳優がいろんなところに出て、父と三津五郎のおじ様が、二人で踊れば見事な踊りが見られ、芝翫の叔父が義太夫狂言をやったら素晴らしいものがあり、福助の叔父が踊ったらこれまたすごい、というのがありました。

 父と三津五郎のおじ様はいなくなってしまいましたが、僕としてはこの人たちに顔向けできないような1カ月にはしたくない。若い後輩が増え、僕もプロデュースというか、自分のことだけではなく、人のこと、お客様のことも考えなくてはいけないし、演目のことも考えなければならないような立場になってきました。なんでもできるようにならなければいけないんだよと、父や三津五郎のおじ様が言っているんじゃないかと思うようになってきましたね。

中村屋!

中村七之助さんをもっと知りたい!

二代目 中村七之助(なかむら しちのすけ)

生まれ 昭和58年5月18日生まれ。
家族 父は十八代目中村勘三郎。兄は六代目中村勘九郎。中村福助、中村芝翫は叔父に当たる。
初舞台 昭和61年9月歌舞伎座『檻(おり)』祭りの子勘吉で本名で初お目見得。62年1月歌舞伎座『門出二人桃太郎(かどんでふたりももたろう)』弟の桃太郎で二代目中村七之助を名のり初舞台。
受賞 平成25年読売演劇大賞杉村春子賞、平成27年松尾芸能賞新人賞ほか。
この一年の舞台

平成29年

8月 「八月納涼歌舞伎」(歌舞伎座)
『刺青奇偶』お仲/『歌舞伎座捕物帖』女医羽笠/『野田版 桜の森の満開の下』夜長姫
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『マハーバーラタ戦記』鶴妖朶王女/『沓手鳥孤城落月』豊臣秀頼/『漢人韓文手管始』傾城高尾
11月 「全国芝居小屋錦秋特別公演2017」(全国8カ所)「特別公演2017」(全国5カ所)
『藤娘』藤の精
12月 「吉例顔見世興行」ロームシアター京都
『寿曽我対面』曽我十郎/『人情噺文七元結』和泉屋手代文七/『大江山酒呑童子』源頼光

平成30年

1月 「壽 初春大歌舞伎」(歌舞伎座)
『箱根霊験誓仇討』女房初花/『菅原伝授手習鑑』「車引」桜丸/『双蝶々曲輪日記』「角力場」藤屋吾妻
2月 「二月花形歌舞伎」(博多座)
『お染の七役』油屋娘お染・丁稚久松・許嫁お光・後家貞昌・奥女中竹川・芸者小糸・土手のお六/『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」源義経/『鰯賣戀曳網』傾城蛍火実は丹鶴城の姫
3月・4月 「春興特別公演2018」(全国12カ所)
『枕獅子』傾城弥生後に獅子の精
5月 「渋谷・コクーン歌舞伎 第十六弾」(シアターコクーン)
『切られの与三』与三郎
6月 「信州・まつもと大歌舞伎」(まつもと市民芸術館)
『切られの与三』与三郎
6月・7月 「平成中村座スペイン公演」(カナル劇場)
『藤娘』藤の精

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