歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「三月大歌舞伎」『鎌倉三代記』『祇園祭礼信仰記』
五代目 雀右衛門さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 五代目 中村雀右衛門

役の性根、気持ちを大切に

 ――6月の博多座での襲名披露興行では『本朝廿四孝』「十種香」の八重垣姫と『熊谷陣屋』の相模をなさいます。八重垣姫も「三姫」の一つ。こちらも初役ですが、これで1年のうちに三姫すべてを演じられることになります。

 八重垣姫も魁春のお兄様におうかがいします。相模も父がよく勤めておりました。父は70歳を過ぎてから「相模がやっとわかったような気がする」と申しておりました。そう言われると、では私はどうしたらいいのかと思いますが、その言葉を思い返しながら、父の舞台を映像で見返します。

 父は映像も「百回ぐらい見ると少しはわかるようなこともあるんだよ」と申しておりましたので、百回以上は見ないといけないと心しております。

 ――お父様はとにかく歌舞伎がお好きな方でした。何か印象に残るお言葉がおありですか。

 父は『京鹿子娘道成寺』をはじめとする「道成寺物」もレパートリーにしておりました。その一つの『豊後道成寺』を父が踊ったときに舞台袖で見ておりましたら、「振りを覚えなくていいから、どういう感じやイメージを伝えたいと思っているかを覚えておきなさいよ」と言われました。役の性根、気持ちを大切にしなさいということだと思います。

雀右衛門の名前に少しでも近づきたい

 ――1月27日には浅草寺の仲見世で襲名成功を祈願するお練りをされました。興行が近づいてきた今、どんなことをお思いでしょう。

 今は、家内やスタッフがねじり鉢巻きで一所懸命に準備をしてくれています。私にできるのはよい舞台をお見せし、お客様に襲名してよかったね、雀右衛門の名に少しは近付いたんじゃないの、と言っていただけるようにすることです。

 芝雀は50年余、名のってきた名前です。3月ももちろんですが、4月の歌舞伎座の公演チラシを見て、「雀右衛門」という名があると、自分だということが頭ではわかっていても、父がいるはずがないし、「これは誰」と思ってしまうような感覚がございます。襲名を経て、少しずつ雀右衛門らしくならなくてはいけないなと思います。

 ――4月は歌舞伎座の夜の部で新作歌舞伎の『幻想神空海』で楊貴妃を勤められます。

 空海が謎解きをするお話だとうかがいました。そのあと、襲名披露興行が6月博多座、7月が大阪松竹座、9月は巡業と続きますので、どうぞ、よろしくお願いいたします。

五代目 中村雀右衛門 京屋!

中村雀右衛門さんをもっと知りたい!

五代目 中村雀右衛門(なかむら じゃくえもん)

生まれ 昭和30年11月20日生まれ。
家族 父は四世中村雀右衛門、母が七世松本幸四郎の娘。兄は八代目大谷友右衛門で、三代目大谷廣太郎、二代目大谷廣松は甥にあたる。
初舞台 昭和36年2月歌舞伎座『一口剣(ひとふりけん)』村の子明石で大谷広松を名のり初舞台。
襲名 昭和39年9月歌舞伎座『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』御半下おひろで七代目中村芝雀を襲名。
平成28年3月歌舞伎座『鎌倉三代記』時姫、『祇園祭礼信仰記』雪姫で五代目中村雀右衛門を襲名。
受賞 平成9年眞山青果賞奨励賞。同20年松尾芸能賞優秀賞、日本藝術院賞。同22年紫綬褒章ほか受賞・受章多数。
この一年の舞台

平成27年

3月 「三月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『菅原伝授手習鑑』「道明寺」立田の前
4月 「四月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『六歌仙容彩』「喜撰」祇園のお梶/『成駒家歌舞伎賑』女伊達/『河庄』紀の国屋小春
6月 「六月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『天保遊?録』芸者八重次/『新薄雪物語』「詮議・広間・合腹」松ヶ枝「正宗内」おれん
7月 「七月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『一谷嫩軍記』「熊谷陣屋」相模
9月 「秀山祭九月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『双蝶々曲輪日記』「新清水浮無瀬の場」藤屋吾妻
10月 「錦秋名古屋 顔見世」(日本特殊陶業市民会館)
『藤娘』藤の精/『俊寛』海女千鳥/『浮世柄比翼稲妻』傾城葛城・お国・茶屋女房
11月 平成27年11月歌舞伎公演「通し狂言 神霊矢口渡」(国立劇場)
『神霊矢口渡』新田の御台所筑波御前・頓兵衛娘お舟

平成28年

1月 「壽初春大歌舞伎」(歌舞伎座)
『梶原平三誉石切』梢/『雪暮夜入谷畦道』三千歳

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