歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」『極付幡随長兵衛』『ひらかな盛衰記』
歌六さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 中村歌六

まだまだ好奇心旺盛で、欲張りですから

 ――7年前の「秀山祭」で、還暦を機に屋号を萬屋から播磨屋に戻されました。

 物心ついてから20歳過ぎまで播磨屋でしたので、播磨屋から萬屋になったときのほうが、しばらく違和感がありました。萬屋から播磨屋に戻ったときは、違和感はなかったですね。育ってきたところですから。

 ――『伊賀越道中双六』「岡崎」の幸兵衛など、初役に成果を上げられていますが、今後演じてみたいお役などあれば、教えてください。

 これまでに手がけた役は、すべて再演したいです。もう一回やったら、もう少しうまくできるのではと…。ですから、「逆櫓」の権四郎もこうして再演できるのがうれしいです。僕は欲張りですし、まだまだ好奇心があるので、何でもやってみたいんです。久しく上演されていないものも興味がありますし。

 先日の「松竹大歌舞伎」東コースの公演(中村芝翫襲名披露)で、『熊谷陣屋』の弥陀六を勤めましたが、そのとき、熊谷を演じていた芝翫くんに「兄さん、『いもり酒』やってくださいよ」と言われました。新洞左衛門、いいですね。最近出ていないでしょ。

祖父、三世時蔵に可愛がられた子役時代

 ――お祖父様の三世中村時蔵さん(1916-1959)には、大変に可愛がられたとうかがっています。

 僕が子役で出られる狂言しかやらなかったときもあったようです。本当に可愛がられました。亡くなる前の最後の言葉が「進一(本名)を、皆で可愛がってやってくれ」。(萬屋)錦之介の叔父や(中村)嘉葎雄の叔父に、「おやじは俺たちのことなんか何にも気にしないで、お前のことだけ心配していたんだ」と、ずっと言われておりました。

 

 ――どんな方でしたか。

 現金を500円以上持ち歩かないんですよ。どこでも、「時蔵です」で精算を済ませてしまう。「おつりはいいです」と。500円だから足りないんですって(笑)。知っている店しか行かないから、きっとあとで請求書が来ていたんでしょうね。楽屋ではよくウナギを食べていました。その頃僕は、タレのご飯だけでよかったんですけど。今は上だけでもいいんです。

 ――8月は旅行にいらっしゃるとうかがいました。

 僕は歌舞伎座が新開場してからはずっと、ありがたいことに1年に11カ月間各座の舞台に出演しています。8月がお休みですので、今回は一家でイタリアとスペインを旅行します。今年が銀婚式なので、家内との新婚旅行をしたベニスとローマに、子どもたちを連れて行くことになりました。どうせならと、足を延ばしてスペインのバルセロナにもまいります。

五代目 中村歌六 播磨屋!

五代目 中村歌六さんをもっと知りたい!

五代目 中村歌六(なかむら かろく)

生まれ 昭和25年10月14日生まれ。
家族 父は四代目中村歌六、息子は五代目中村米吉、弟は三代目中村又五郎。五代目中村時蔵、二代目中村錦之助、二代目中村獅童はいとこにあたる。
初舞台 昭和30年9月歌舞伎座『夏祭浪花鑑』倅市松ほかで四代目中村米吉を名のり初舞台。
襲名 昭和56年6月歌舞伎座『一條大蔵譚』大蔵卿で五代目中村歌六を襲名。
受賞 平成8年眞山青果賞奨励賞、13年十三夜会賞助演賞、22年松尾芸能賞優秀賞。27年第22回読売演劇大賞優秀男優賞。同年芸術選奨文部科学大臣賞。28年日本芸術院賞。
この一年の舞台

平成28年

9月 「秀山祭九月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『碁盤忠信』小柴入道浄雲/『らくだ』家主佐兵衛
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『外郎売』工藤祐経/『熊谷陣屋』白毫弥陀六
11月 「平成28年度文化庁芸術祭主催11月歌舞伎公演」(国立劇場)
通し狂言『仮名手本忠臣蔵』「六段目」原郷右衛門
12月 「平成28年12月歌舞伎公演」(国立劇場)
通し狂言『仮名手本忠臣蔵』「十段目」天川屋義平

平成29年

1月 「壽 初春大歌舞伎」(歌舞伎座)
『伊賀越道中双六』「沼津」雲助平作/『井伊大老』仙英禅師
2月 「猿若祭二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『四千両小判梅葉』隅の隠居/『梅ごよみ』千葉藤兵衛
3月 「平成29年3月歌舞伎公演」(国立劇場)
通し狂言『伊賀越道中双六』山田幸兵衛
3月 「三月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『助六由縁江戸桜』くわんぺら門兵衛
4月 「四月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『傾城反魂香』土佐将監
5月 「團菊祭五月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『伽羅先代萩』「御殿」八汐
6月 「六月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『曽我綉?御所染』甲屋与五郎/『一本刀土俵入』波一里儀十
6月・7月 「松竹大歌舞伎」東コース(全国公演)
『熊谷陣屋』白毫弥陀六

ようこそ歌舞伎へ

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