歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」『梶原平三誉石切』『壽曽我対面』
彦三郎さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 九代目 坂東彦三郎

自分が演じる歯車のサイズを見極める

 ――舞台に出演されるときはどんなお気持ちですか。

 嫌なこともありますが、毎日楽しいです。父には一段ずつ昇って行くようにと教えられました。「一段抜かし、二段抜かしで駆け上がったら、飛ばした分は身にならない」と言われました。作品の中で自分が演じる役の歯車としてのサイズを見極める。出るべき時ではない時に主張しすぎるのは行儀の悪いことですし、芝居がうまく回らないことにもつながる。自分よりも作品が重要です。

 ですからお客様に、「楽しかったね」と言っていただくのが、自分にとっての最高の誉め言葉です。その後に「あの役者さん誰だろう」となったら、もっといいですね。

 ――歌舞伎以外の舞台では、『わが魂は輝く水なり』(清水邦夫作、蜷川幸雄演出、平成20年5月シアターコクーン)の斎藤六郎が印象に残っています。

 蜷川さんには日々怒られ、「歌舞伎のぬるま湯に浸かっているなよ」と言われました。公演終了後、僕ら歌舞伎役者は翌日から博多で稽古をするのに、ほかの共演者は、オーディションを受けないと次の仕事が決まらないと聞きました。僕らは普通にしていれば、仕事をもらえ、365日過ごすことができる。当たり前に思っていたことが当たり前ではないと、身に染みて感じた大きな出来事でした。それからは、当たり前であることに感謝し、より歌舞伎をより頑張るようになりました。

 ――よく通る素晴らしい声をお持ちですよね。

 「せりふをお腹の底まで落とし、言葉にして中から出しなさい」と、父には教えられました。そうすると自然に腹式呼吸になると言われました。声を誉めていただくことが多く、武器だと思っていた青臭い時期もありましたが、今はそれを殺すことも必要だと思います。権十郎の叔父にも「緩急、強弱の付け方を覚えなさい」と言われています。

 ――教えを受けることのできる方がたくさんいらっしゃいますね。

 舞台の真ん中に立てる父、女方のできる萬次郎の叔父、『魚屋宗五郎』の三吉のような世話物のできる権十郎の叔父。3タイプの役者がいて弟もいる。さらに菊五郎劇団というファミリーがあります。異なる目で、ご指導いただけるのは本当にありがたいことです。

九代目 坂東彦三郎 音羽屋!

九代目 坂東彦三郎さんをもっと知りたい!

九代目 坂東彦三郎(ばんどう ひこさぶろう)

生まれ 昭和51年6月29日、東京都生まれ。
家族 父は彦三郎改め初代坂東楽善、息子は六代目坂東亀三郎。弟は亀寿改め三代目坂東亀蔵。
初舞台 昭和56年12月国立劇場『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」寺子で坂東輝郷の名で初お目見得。同57年5月歌舞伎座『淀君情史』亀丸で五代目坂東亀三郎を名のり初舞台。
襲名 平成29年5月歌舞伎座『梶原平三誉石切』梶原平三、『壽曽我対面』曽我五郎ほかで九代目坂東彦三郎を襲名。
この一年の舞台

平成28年

5月 「團菊祭五月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『十六夜清心』船頭三次/『勢獅子音羽花籠』鳶の者
6月 「六月博多座大歌舞伎」 (博多座)
『毛抜』八剣玄蕃/『女伊達』男伊達淀川の千蔵
7月 「七月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『柳影澤蛍火』成瀬金吾/『鎌髭』『景清』下男太郎作実は梶原源太
9月 「秀山祭九月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『元禄花見踊』元禄の男
10月 「芸術祭十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『女暫』猪俣平六/『極付 幡随長兵衛』坂田公平/『外郎売』曽我十郎
11月 「平成28年11月歌舞伎公演」(国立劇場)
『仮名手本忠臣蔵』「道行旅路の花婿」鷺坂伴内/「七段目」赤垣源蔵
12月 「十二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『京鹿子娘五人道成寺』所化

平成29年

1月 「平成29年初春歌舞伎公演」(国立劇場)
『しらぬい譚』菊地貞行
2月 「猿若祭二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『四千両小判梅葉』頭
3月 「三月大歌舞伎」 (歌舞伎座)
『明君行状記』青地善左衛門/『助六由縁江戸桜』通人里暁

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