歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



『桜姫東文章』(※5)
1817年に江戸河原崎座で初演。四世鶴屋南北の作。僧侶清玄と稚児白菊の因果物語をベースに、白菊の生まれ変わりである桜姫、悪党権助の人生が複雑に絡み合う物語。かつて貫通した権助が忘れられず女郎に淪落する桜姫の描写が好評を博した。
 

背徳に、萌える

 鷺娘の美しさ。
 それは心の準備を全くしていなかった時に、
 絶滅しゆく美しい命を目撃することに、似ている。

 椎名林檎さんの感受性、生み出す言葉。そのひとつひとつが持つ美しさと背徳に、歌舞伎と通じるものを感じます。

富樫「椎名さんが初めて歌舞伎をご覧になったのは?」

椎名「22歳か23歳頃です。その前から気になってはいたんですけど」

富樫「初めて観て、どうでした?」

椎名「まさに坂東玉三郎さんの舞踊公演を拝見したのですが…とにかく圧倒されました。美しさや、その世界に。以来、しょっちゅう観に行くようになったんです」

富樫「歌舞伎って、古いものだという先入観もありますよね」

椎名「書いた人がすごく古かったりしますからね。でも身体を使って表現するからこそ新しくあり続けられるんだと思います。朽ちていかんとする生き物、人間が演じるわけですから、新しいクリエイションが生まれ続けている」

富樫「生き生きしてますよね。戯曲も古いのにカッコいい」

椎名「そう。黙阿弥さんなんて本当にカッコいい。台詞とか、言ってみたくなりますもん」

富樫「『三人吉三』の大川端の場なんて、辻褄合ってなくても音の感じ抜群だし」

椎名「そうそう!かっこいいギターリフとかと一緒なんですよね。スキャットとかシャウトとか。『どうやって出すのそれ!かっこいい』っていうのと同じノリでしょ。いちいちキマってる。」

富樫「でも、そこだけ単独上演、シングルカットしてるのはすごい」

椎名「そうなんですよね(笑)でも着うたとか、そういうことなんじゃない?」

富樫「内容もかなりエッジがきいたの多いですよね。『桜姫東文章』(※5)とか、お姫様から女郎に堕ちるって」

椎名「あの話はエロい。萌えですよ」

富樫「確かに!姫が女郎って、萌えですね」

 刹那の輝きから眼を離さない。
 強く、純粋な心で表現に対峙すること。
椎名林檎さんの芸に対する深い愛に触れ、身が引き締まりました。

 

プロフィール

椎名林檎(シイナリンゴ)

1978年11月25日生まれ 午年 福岡市出身
1998年5月27日シングル『幸福論』でメジャーシーンにデビュー。 アルバム『無罪モラトリアム』、『勝訴ストリップ』『唄ひ手冥利?其の一?』(カバー集)、『加爾基 精液 栗ノ花』を発表。
2003年 東京事変結成。 メンバーと共に椎名林檎実演ツアー「雙六エクスタシー」を敢行。 
節目シングル『りんごのうた』を発表後、2004年からはバンドとソロ活動を並行して行う。
2007年2月に公開された映画『さくらん』で初の音楽監督を務め、4年ぶりに発表したソロアルバム『平成風俗』がチャート1位を獲得。 間髪入れずに東京事変での活動に突入し、今年9月、最新アルバム『娯楽(バラエティ)』をリリース。現在行っている全国ツアーの最終公演日11/21に新曲「閃光少女」を収録したDVDとアナログを発表する。同曲は現在「SUBARU 軽 STELLA R2」CMソングとしてオンエア中。
公式サイト:SR猫柳本線

『閃光少女』DVD \1950(税込)
TOBF-5540 EMI MUSIC JAPAN
(2007年11月21日発売)
『娯楽(バラエティ)増刊号』アナログ盤 \2800(税込)
TOJT-26351 EMI MUSIC JAPAN
(2007年11月21日発売)
 

富樫佳織

放送作家。NHKで歌舞伎中継などの番組ディレクターを経て、放送作家に。

「世界一受けたい授業」「世界ふしぎ発見!」「世界遺産」などを手がける。中村勘三郎襲名を追ったドキュメンタリーの構成など、歌舞伎に関する番組も多数担当。

富樫佳織の感客道

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