歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



富樫佳織の感客道  

第三回 書家 紫舟さん

観劇は遠足に似ている

 初観劇ということで、二回目の幕間にはおやつも召し上がっていただきました。
 南座の右隣「祇園饅頭」の花見団子とはっか餅です。

富樫「南座って、一歩足を踏み入れると非日常空間ですよね?」

紫舟「お芝居が面白いのはもちろんですが、なんか遠足に来たような楽しさですね」

富樫「遠足?どんなところが?」

紫舟「私の通っていた小学校は、とにかく遠足で長時間歩くんですよ。片道3時間とか。とてもしんどいんだけど、それは目的地でお弁当をより美味しく食べるための準備なんですよね。歌舞伎も、この日本的な空間に足を踏み入れた瞬間から舞台を楽しむ準備が始まっているんだと思います」

富樫「客席でお弁当とかおやつを食べるのも遠足チックですよね」

紫舟「そうそう。きっと着物でおしゃれをして来ている方たちは、より遠足を楽しんでいるんでしょうね。それに思っていたより本当に気軽!私は関西に長く住んでいたので、吉本とか漫才を観にくる気分で来られるな―と思いました」

富樫「一度来てみると、肩の力が抜けますよね」

紫舟「ちょっと行こうよって、行ける雰囲気ですよね。みんな舞台観ながら笑ったり、手を叩いたり、声かけるのとかも一緒!あ、でも漫才みたいに『面白くない!ひっこめ!』って言うお客さんはいませんけど」

 古典と言われる文化は、伝統を背負う表現者たちの新しい試みが時代を経て積み重なり続けるものではないでしょうか。
ならば歌舞伎も書も、眼の前で表現者が繰り広げる挑戦を目撃する共犯関係が感客の楽しみではないか。
 紫舟さんとの感劇を通して、また新たな楽しみ方を発見しました。

【祇園饅頭】
【はっか餅・花見だんご】
【霧太郎天狗酒? 解説】
謡曲の『是界』を下敷きに、源氏の世継ぎ争いを背景に書かれた物語。天狗の妖術を使って源氏の重宝・白旗と鬼切丸を奪い、この世を魔界に変えようとする大盗賊・霧太郎と源氏の武将たちのせめぎ合いが描かれる。回り舞台を発案した並木正三の作品らしく、宙乗りやテンポのよいせり上がりなどスペクタクルたっぷりの演出が見所のひとつ。
 

第二回 書家・紫舟さん

紫舟(ししゅう)

書家。20代でデビューし、2005年にベネチアンビエンナーレ企画展に作品出展。 映画浜崎あゆみのミュージックビデオ「月に沈む」や、NHKで放送中の「美の壷」の題字、朝日新聞での連載など幅広いジャンルで活躍。現在まで15回の個展で作品を発表。国内外でのライブペインティングにも積極的に挑戦している。

紫舟さん
 

富樫佳織

放送作家。NHKで歌舞伎中継などの番組ディレクターを経て、放送作家に。

「世界一受けたい授業」「世界ふしぎ発見!」「世界遺産」などを手がける。中村勘三郎襲名を追ったドキュメンタリーの構成など、歌舞伎に関する番組も多数担当。

富樫佳織の感客道

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