歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

ところで大阪の人の恋愛観って・・・

 雪の中、揃いの黒い着物を着て落ち延びる梅川と忠兵衛の姿は胸をしめつけられるほど美しい。近松門左衛門の作品には、大坂の商人たちがエネルギッシュに生きていた時代を感じます。

富樫「ただいつも、なんで情けない男ばっかりでてくるのかなって思うんです」

服部「うーん。でも、あれはよくある話なんですよ」

富樫「よくあるんですか?!」

服部「僕は大阪の出身ですが、小さい頃から松竹新喜劇とか吉本を観ていると情けない男が主人公の設定はすごく多いんですよ」

富樫「で、だいたい自分がダメなのに彼女とか奥さんに八つ当たりして文句言ったりしてますよねえ…」

服部「情けないけど愛嬌たっぷりで、女の人がついつい惚れてしまうっていうのがね。そういう風太郎がいいなって感じが大阪にはありますよね」

富樫「おおむね女の人は素敵ですよね。梅川も美人で優しいし…」

服部「いい女ですよ。ああいう尽くせる女の人っていいと思いますよ」

富樫「でも、あそこで死ぬかなあ。一緒に」

服部「そうだねえ」

富樫「筋書を読んでいたら忠兵衛を演じた俳優さんが“短気で思慮の浅い男の話を今回は演じています。現代に通じるようにあえて浅はかな男にしてみた”と書いてらして、浅はか…なるほどなあと思ったのですが」

服部「海外に行くようになって思うんですけど。大阪はラテンですよね。スペインとかラテンの国は、お店で知らない人とかがカウンターにいたらすぐ声をかける。それは今、自分に与えられた時間をどう楽しむかにすごく貪欲だからなんです。浅はかとも言うけど、今が一番大事っていうのがあるかもしれない」

富樫「そういう男の人を支えてくれて、大阪はいい女が多いんですね」

服部「そうかもしれないですね。人と人が支え合うっていう土壌があるから、近松のような話が成立するんだと思いますよ」

富樫佳織の感客道

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