歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



   

いつでも観られる「正しさ」が気持ちよい

富樫 「和田さんはアメリカの会社で、女性初ということをどんどん成し遂げてたわけですが、今、歌舞伎に夢中になるのはどういった感覚なのでしょうか?」

和田 「アメリカの会社に勤めて外国人と仕事をしてきましたが、やっぱり自分は日本人なんですよね。歌舞伎を観ると、そういった自分の日本人らしさに出会えるのが新鮮で気持ちいいんですよ」

富樫 「日本人らしさ…」

和田 「歌舞伎のストーリーは、親子の情や恋人同士の愛情といった『正しい感覚』をベースに作られていますよね。特に今の社会はメディアが連日のように殺伐とした話題を流し続けるので、一体どうなってしまったんだろうと不安になってしまうでしょ」

富樫 「確かに。現実が芝居を超えていますよね」

和田 「そんな時、歌舞伎というのはいつ来ても、人として正しい考え方、価値観のある場所なんです。もちろん俳優さんの魅力や華やかな舞台も楽しみですが、それよりもこれだけ多くの人が足を運ぶのは日本人としての軸をしっかりと感じることができるからではないでしょうか」

富樫 「人が死んでしまったり、借金で苦しむ人が主人公だったりするのに不思議ですよね。でも歌舞伎が生き続ける限りは、私たち日本人が心の底に持っている『正しい感覚』も伝わっていくと信じたいです」

和田 「特に歌舞伎は“人と人のつながり”を描いた話が多いですよね。今日拝見した『十六夜清心』もそうです。許されない仲を案じて心中する恋人同士がいれば、生き残った女の人を助けて世話する人もいる。私が歌舞伎を観始めて熱中している大きな理由は、芝居を観ると『日本人っていいな』と思うからなんですよね。それが400年も生き続けているのは素晴らしいと思います」

 歌舞伎を観始めて、着物を着る楽しみを覚える。チケットを取った日から予定を空けてワクワクする。劇場で好きな俳優さんの一挙手一投足を生で観る。劇場での楽しみ方は人それぞれですが、歌舞伎の大きな魅力は自分の世界がどんどん広がっていくことだと思います。

 和田浩子さんの歌舞伎の楽しみ方は、まさに女性の王道と見たり!私も歌舞伎を深く楽しめる大人を目指したいと思います。

 

プロフィール

和田浩子

P&Gファー・イースト社に入社し、女性として初めてのマネジメントキャリアとしてマーケティング部に配属。「ウィスパー」を日本市場でトップブランドに育て上げ、続いてヘアケア製品「パンテーン」「ヴィダルサスーン」の立ち上げを手がける。1998年、日本人で初めて米プロクター・アンド・ギャンブル社のヴァイスプレジテント(副社長)に就任。2001年、ダイソン日本支社の代表取締役社長、日本トイザらス代表取締役社長兼COOを経て、Office WaDaを設立。2009年4月より桃山学院大学客員教授就任予定。著書に『P&G式 世界が欲しがる人材の育て方』(ダイヤモンド社 刊)

 

富樫佳織

放送作家。NHKで歌舞伎中継などの番組ディレクターを経て、放送作家に。

『世界一受けたい授業』『世界ふしぎ発見!』『世界遺産』などを手がける。中村勘三郎襲名を追ったドキュメンタリーの構成など、歌舞伎に関する番組も多数担当。

     

富樫佳織の感客道

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