歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



強さと繊細さの『錦秋特別公演』 ? 伝統を継ぐ若手が生み出すもの ?

 中村七之助さんが兄・勘太郎さんと共に錦秋特別公演を始めたのは2003年。以来、全国のさまざまな都市で歌舞伎舞踊の魅力を伝えてきました。
 そして今年2009年は和太鼓奏者の林英哲さん、津軽三味線奏者の高橋竹童さんとともに「芯」というタイトルをひっさげて新しい公演に挑みます。

七之助 「まず序幕に林英哲さんの太鼓があって、続いて高橋竹童さんの津軽三味線、兄と僕との舞踊『二人椀久』、最後は全員でのコラボレーションステージとなります。太鼓と津軽三味線は派手で勢いがありますから、これまでにないワクワクする舞台になると思います。邦楽の演奏と歌舞伎舞踊という組み合わせもありそうで実はあまりなかったのです」

富樫 「若手の邦楽奏者の方とのコラボレーションをなさるのには、ニューヨークやヨーロッパ公演での経験も影響しているのでしょうか?」

七之助 「アメリカやヨーロッパに行って一番感じたのは、役者だけで何か新しいものを作ろうとか、音楽家だけで新しい挑戦をというより、どんな表現者にも自分の文化や踊り、楽器というものを大切にしている心があるということです。そういう意味で今回の公演は、なぜいままでやらなかったのかが不思議なくらい、自分の中ではしっくりきています」

富樫 「プログラムの流れもいいですね。まずは太鼓、三味線、舞踊とそれぞれの芸を見せる演目があって、最後はコラボレーションの『芯』。こちらは素踊りになるのですか?」

七之助 「そのつもりです。田中傅左衛門さん、林英哲さんが音楽監督をなさって曲もオリジナルで作ります。音楽から創作する舞踊はもちろん初めてですから、楽しみながらやっています。どんな舞台になるか…ぜひ観にきていただきたいと思います」

富樫 「錦秋特別公演は全国どこの会場でも若い方でいっぱいですよね」

七之助 「ありがたいと思っています。僕としては東京のように毎月歌舞伎の上演がない都市の方でも、まずは歌舞伎や邦楽に興味を持っていただけたらいいなと思って続けています。古典芸能って、中学生や高校生の時に“お勉強”として観る経験が皆さんあるでしょう?」

富樫 「ああ…でも“勉強”と言われると内容に関わらず“つまらない”と決めつけてしまうところがありますよね。私もそうだったんですけど…」

七之助 「錦秋特別公演はお勉強ではありませんから(笑)。気軽に興味があったら来て、観て、何かを感じていただきたいです。面白いなとか、つまんないでもいいと思いますし…(笑)。なにかの感情がそこに生まれたら僕たちとしては嬉しいです」

富樫 「古典芸能界は若い方々が前向きにいろいろな挑戦をしていますが」

七之助 「まだ20代で同世代の方と一緒に新しいものを作ることができるのは、ありがたい経験ですよね。ただ新しいことばかりでなく、若いからこそ古典をしっかりと勉強したいと思っています」

 新たな創造とともに、錦秋特別公演では歌舞伎舞踊の初役に挑戦します。
七之助さんに舞踊の楽しみ方を伺いました。

富樫佳織の感客道

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