歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



白浪五人男に流れる、ロックのエッセンス!

 一幕目のだんまり、二幕目の浜松屋と続いて盛り上がる今回、私は虎視眈々と待ち続けていた場面がありました。二幕目最後の『稲瀬川勢揃の場』です。日本駄右衛門を始めとする5人が、揃いで誂えた着物を着てずらりと花道に並ぶ場面。そのカッコよさを、ヤッコさんにぜひ観ていただきたかったのです。

高橋「最高!驚きました。着物がカッコいいというのはもちろんだけど、彼らがずらっと並ぶ感じや、ひとりひとりの緊張感とか…」

富樫「私はいつも観る度に、ああ、これってロック!って思うのですが…」

高橋「ロックだと思う。それにね、本当に新しい!振り切っている感じがするのよね、創っている人たちの気持ちが。だから新しいものであり続けるんだと思います」

富樫「歌舞伎にロックなテイストを感じるひとつの理由が、ある時点から男性が創りあげるものになったからじゃないかと思うんですよ。男の人たちだけの盛り上がり感というか、坂をどんどん転がり落ちて行く勢いで(笑)でも上昇しているというパワーを感じるんです」

高橋「女の人のやりすぎ感と違うのよね。そして、女の人が入るとどうしても上品にまとまってしまうところがあると思います。私もそうなんですけど(笑)」

富樫「先ほど、だんまりのところで南郷力丸が虎の毛皮をまとっている話をしましたけど…勢揃いの場面の着物もすごいですよね。蛇とか雷ですよ…」

高橋「大胆よね。衣裳や舞台装置の色や形ももちろんだけど、目の前で動いている人物がみんなかわいらしくてよかった。観ていて気持ちいい!」

富樫「例えばどんなところが?」

高橋「とにかく都合よくストーリーが進むのよ(笑)。それが気持ちいいなと思いました。きっと作者の人は最初、ラフにストーリーを考えていて、書きながらもっとこうしよう!ああしよう!って浮かんできて楽しく書いたんでしょうね。サービス精神が伝わってきました」

富樫「ヤッコさんが江戸時代に歌舞伎のステージに携わっていたら?」

高橋「楽しかったでしょうね!毎日ワクワクしていたと思います」

 歌舞伎にはサービス精神が溢れている、と見抜いたヤッコさん。さすがだと思いました。書き手と俳優が、もっとこうしよう!もっと面白くしよう!と疾走し続けるからこそ歌舞伎は生き続け、新しくあり続けている。だからこそ現代を生きる私たちに大きな衝撃を与えてくれるのだと思いました。

高橋「いろいろなところを観る楽しみもありますね。ツケ打ちをしている若い男の子がカッコいいなーとか」

富樫「イケメンチェック!?」

高橋「そういう若い人たちがこれから成長していくのかしら、なんて思いながら観るのもいいじゃない。ワクワクして」

 

富樫佳織の感客道

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