歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



   

歌舞伎座にいる!という体験が楽しいです


 「わあ、この感じ、ちょっと久しぶり」

 小島さんは1階の客席に入ると、笑顔で吹き抜けの空間を見回しました。そしてちょっと深呼吸。それは自分と劇場との息を合わせるようにも見えました。

小島 「初めて来たのは20代の前半です。歌舞伎の俳優さんとお仕事をご一緒させていただいたのがきっかけで舞台を観に。初めての時は、現代劇の劇場と違うことがいろいろあってビックリしました」

富樫 「例えばどんなことですか?」

小島 「お芝居が始まっても客席が明るいままだったり、しかもお客さんがご飯やおせんべいを食べていることとか(笑)、そうそう、休憩が30分もあることもビックリしました」

富樫 「全部で4時間以上というのも、ゆっくりしていますよね」

小島 「歌舞伎に来る楽しみはきっとお芝居を観るだけではないんですよね。食事をしたり、席に座って他のお客さんの様子を眺めたりするのも私は楽しいです。“歌舞伎に来た自分”というのが楽しいんですよね(笑)」

 今回、30分の幕間に2階の食事処で食事をとった時も小島さんはとても楽しそうでした。お弁当の写真を撮影したり、2階の売店の様子を興味深く見ていたり…まさに体験型です。

小島 「実は何度も来ているんですけど、2階に初めて来ました…」

富樫 「え!」

小島 「洋服を売っているお店があるんですね!…知りませんでした」

富樫 「現代劇の劇場には間違いなくないもののひとつですよね」

小島 「不思議な空気がありますよね。いつも歌舞伎座に来ると私は背筋がぴっと伸びる感じがするんです。最初に来た20代の時、ものすごく背伸びしている感覚があったのですが、その背伸びしている自分がとても楽しかった。あの頃の感覚が今も続いているんです。きっと」

 小島さんが歌舞伎を観る度にはっとさせられるのは、舞台上の俳優と客席のお客さんとが一緒に芝居を作り上げているライブ感だとも言います。

小島 「お芝居中にかけ声がかかりますよね。タイミングは決まっているんですか?」

富樫 「かけ声をかける方は“大向こう”と呼ばれるのですが、長く芝居を観て台詞や間を引き立てるタイミングをつかむそうですよ」

小島 「観客との掛け合いで芝居ができていくんですね。俳優も嬉しいと思う」

 ただじっと座ってお芝居を観るだけではなく、流れる時間を自分でどう過ごすか。小島さんが“歌舞伎座にいる自分を楽しむ”という通り、まさに歌舞伎は観客体験型のエンターテイメント。楽しまなければ損!なのです。

富樫佳織の感客道

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