歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

自分自身でいる、『そこに在る』生き方をしたい

 美波さんは9月12日から10月4日まで、シアターコクーンで上演される 蜷川幸雄さん演出『コースト・オブ・ユートピア ―ユートピアの岸へ』にご出演します。観劇の日は、稽古を控え台本を読み込んでいる段階でした。

美波 「まだ台本を読んでいる段階ですが蜷川さんの作り出すビジュアルは私の想像を大きく越える素晴らしいものになると思いますし、演じていく中で新しい発見に出会うのが楽しみです」

 お芝居の舞台は激動の19世紀ロシア。若き知識人たちが理想の社会を求めて他の地 ―ユートピアを目指す。第1部から第3部までの上演時間は9時間。登場人物は70名を越える超大作です。

美波 「登場人物たちは哲学者ですから、常に自分の中でいろいろ考えていること、つまり目には見えないことを表現していくという芝居です。そういった意味で脚本を読んでいると上方舞を通して学んだこと、抑えることでエネルギーを表現するということとつながる気がします」

富樫 「美波さんという女優の根底に、日本の伝統文化という新たな流れが生まれたことで新しい舞台でのご活躍が見られそうですね」

美波 「上方舞のお稽古はまだ始めたばかりですからまだまだこれから長い道程ですが、私が上方舞を通して発見している“在り方”というものをこれから考えていきたいと思います。言葉にするととても難しいのですが…」

 自分が自分として、ただ在ること。

 演じることも、舞台を観て何かを感じることも、その在り方に突き詰められるのではないかと美波さんのお話を通して考えさせられました。 劇場でお弁当を食べながら気楽にくつろぐのも、刹那の場面に没頭することも…すべては自分の在り方にゆだねられている。だからこそ人は、劇場で芝居を通して自分自身を発見する気持ちになるのかもしれません。

富樫佳織の感客道

プロフィール

美波

1986年生まれ。2000年『バトルロワイヤル』にて映画デビュー。舞台『ネバーランド A GO!GO!2』『贋作 罪と罰』『転生薫風~テンセイクンプー~』を始め、蜷川幸雄演出『エレンディラ』(ガルシア=マルケス作)ではヒロインの娼婦・エレンディラを演じる。以来『かもめ』(チェーホフ作)のニーナ役、『帰ってきた浅草パラダイス』の沼沢八重役といった、美しく純粋な女性を次々と演じ、若手舞台女優として注目を集めている。テレビドラマ『有閑倶楽部』やCMにも多数出演。9月12日よりシアターコクーンで上演される『コースト・オブ・ユートピア ―ユートピアの岸へ』に出演。

 
 
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富樫佳織

放送作家。NHKで歌舞伎中継などの番組ディレクターを経て、放送作家に。

『世界一受けたい授業』『世界ふしぎ発見!』『世界遺産』などを手がける。中村勘三郎襲名を追ったドキュメンタリーの構成など、歌舞伎に関する番組も多数担当。東京工芸大学非常勤講師。

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