歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



『CDで楽しむ えいごよみきかせ絵本1』
価格:本体1400円(税込1470円)
発売日:2月初旬予定
発売元:成美堂出版

 

日本人の心に伝えたい、大切なこと

 久保純子さんはアナウンサーとして活躍しながら、子供たちに英語を教える活動もしています。ご自身、小学校時代をイギリス、高校時代をアメリカで過ごした帰国子女です。だからこそ特に、日本人としての自分を意識し、生きてきたのではないでしょうか。

久保「父の転勤でイギリスに行った時、日本のことを全然知らないことがとても恥ずかしかったんです。逆にイギリスは小学校の低学年から、自分の国についてきちんと勉強をします。どんな歴史があって、どんな人たちがどんな想いで国を作ってきたのか…」

 日本のことをきちんと知りたい。以来、久保さんは日本舞踊や茶道に挑戦したり、歴史を自分なりに調べるようになったと言います。

久保「それで何かを語れるわけではないんですけど(笑)。英語を学ぶ子供たちに伝えたいのは、話す中身がなければ伝えることはできない、ということ。言葉を学ぶのと同時に、自分の引き出しを増やしていくことの大切さを伝えたいです」

富樫「言葉の話がでましたが…。言葉をお仕事にしている久保さんは歌舞伎の台詞をどう感じましたか?日本語独特の何かを…」

久保「とても響きがきれいですね。そして言葉に力がある、強弱がありますね」

 その言葉が持つ強弱こそ、久保さんが大切にしている「心を伝えること」に深く関わっています。

久保「本来言葉って、怒った時は語調が強く甲高くなるし、強く何かを伝えたい時は声を張ったり間を空けたり、感情とともに強弱がつくものなんですよね。でも今の子供たちを見ているとその強弱がなくなってきています」

富樫「どうしてなんでしょう?」

久保「あまり感情を表に出さない子供が増えているんでしょうか…。それは言葉が時代とともに変化していることもありますが、環境が大きいと感じていて…」

 例えば、とても欲しかったプレゼントをもらったとき。人は喜びを大きな声で表現します。でも今の子供たちの周りには物や情報が溢れ過ぎていて、何を受け取っても当たり前なのではないか。感動が少ない、心が動きづらい環境で育つことが、言葉の強弱をなくしているのではと久保さんは考えます。

久保「最近の事件を見ていても、言葉で想いを伝えられないからつい行動を起こしてしまったり、すぐに相手のせいにして暴走したり…。一概には言えないけれど、言葉の足りなさが背景にあるような気がします。逆に歌舞伎の台詞は人間が持つ喜怒哀楽がはっきり豊かに伝わってきました」

 年齢と人生経験を重ねたからこそ、今回の感劇は歌舞伎の持つ普遍性、そして現代社会に通じる普遍性を発見できたと久保さんはおっしゃいます。「韓流」「格差社会」といったキャスターならではの現代的な目線。そして母親だからこそ感じ入る親子の愛情。久保さんとの感劇は、歌舞伎の懐の深さを再認識させてくれました。なによりも『鎌倉三代記』を純愛ものととらえた感客としての目線は素晴らしい!私自身が歌舞伎に対して持っていた固定観念がいい意味で覆された想いです。

 

プロフィール

串田和美

 1994年NHK入局。『ニュース11』、『プロジェクトX』、『紅白歌合戦』の紅組司会者を3年連続務めるなど活躍の後、2004年4月よりフリーアナウンサーとして活動。
 「ブロードキャスター」(TBS系列 土曜日夜10:00~11:24)、「ウチくる!?」(フジテレビ系列 日曜日午後00:00~1:10)、「ミュージックサタデー」(文化放送 土曜日午前10:00~)などに出演する傍ら、母の経営する英語教室で子どもたちに英語を教えたり、絵本の翻訳や読み聞かせなど幅広い分野で活躍している。2月初旬には絵本と音声がセットになった「CDで楽しむ英語読みきかせ絵本1」を発売。

 

富樫佳織

放送作家。NHKで歌舞伎中継などの番組ディレクターを経て、放送作家に。

「世界一受けたい授業」「世界ふしぎ発見!」「世界遺産」などを手がける。中村勘三郎襲名を追ったドキュメンタリーの構成など、歌舞伎に関する番組も多数担当。

富樫佳織の感客道

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