歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



   

職業柄、裏方どうなってんやろと気になります

 芝居はもちろんのこと、義太夫や附打ち、黒衣などの動きもかなり気になったと濱口さんは言います。中でも濱口さんをうならせたのは『一谷嫩軍記』の「須磨浦浜辺組打の場」で熊谷と敦盛が波打ち際で一騎打ちとなる場面。舞台前面を覆う水色の幕がダイナミックに動き、馬に乗って闘う様子を表現します。

濱口「以前ライブで、波を立てる場面があったんです。演出の鈴木おさむ君と僕ら一生懸命考えて、波を袖で引っ張ったり試行錯誤したんですけど、なかなか上手くいかない。最終的に、布の中に人が入って手を突き上げるように動かすと一番波らしく見えるというところにたどり着いたんですよ」

富樫「それは…今日『一谷嫩軍記』でやっていたのと同じ動きですよね」

濱口「そうなんです!今日観て、あ!やってるわ!やっぱりあれでいいんやってびっくりしました」

富樫(笑)

濱口「予算があったらね、扇風機を下から入れてバーっとやる方法もあるんですよ。でも予算がないから知恵を絞って、自力でたどり着いた方法を歌舞伎でやってる!正しかったんや!って嬉しかったですね(笑)」

富樫「歌舞伎の作り方でいうと、場面の転換がすごく特徴的だと思うんですよ。暗転しないでお客さんが観ている前で大道具を運んでシーン変えちゃうとか。『廓文章』だと舞台袖の書割りを本のようにピロンとめくったら、玄関の前から室内になっちゃうとか」

濱口「あれはねえ、僕らのライブやってくれてる大道具さんに見せたい!って思いましたね」

富樫「そうなんだ(笑)」

濱口「袖にはけて暗転しなくても、そのまま続けてやればいいんや!その間に黒衣が小道具を運んで来て!そうしたらそこでの笑いも起こるだろうし、笑いなしでやっていく面白さもありますよね。今まで暗転して次のネタに行くのが当たり前だったんだけど、それだけじゃないんですよね。そうじゃない展開の方法に気づいたことがとても新鮮でした」

 歌舞伎の舞台を創り上げるたくさんの要素の中で、濱口さんを釘付けにしたのは浄瑠璃を語る義太夫さんだったそうです。

濱口「一番大変なのって、この人なんやろなって思いながらじっと観てしまいました。あんだけ声張り上げて、よう枯れへんなと思いながら」

 自分自身も舞台を創り上げるからこそ、共通点や新発見がある。その接点を見つけると、古典だと思っていた歌舞伎が自分と近づいて面白くなる。今の舞台でやったらどうなるだろう?お笑いライブでこの演出をしたら?そんな好奇心が濱口優さんの感客道です。

富樫佳織の感客道

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