歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



(※4)『廓文章』
正徳2年(1712年)に初演された近松門左衛門の人形浄瑠璃『夕霧阿波鳴渡』の「吉田屋」の場面を元に夕霧と伊左衛門がめでたく夫婦になると結末を改めた作品が『廓文章』。

「三都名所図会」
国立国会図書館蔵(禁無断転載)
大坂の豪商として知られる藤屋の若旦那・伊左衛門は放蕩が過ぎて家を勘当されながらも愛しい夕霧に会うため吉田屋を訪れる。ところが座敷で待つうちに夕霧が心変わりしたのではという不安が募り、部屋に戻ってきた夕霧に邪険な態度をしてしまう。

 

かぶく人々の面白さを冷静に見つめる目

 ご存知の通り、歌舞伎の語源は「傾き(かぶき)者」と呼ばれた江戸の人たちのことです。彼らは奇抜なファッションで街を歩き、その身なりや行動が舞台に取り入れられ発展していったと言います。歌舞伎の根底には今も、かぶくことへの焦がれが脈々と流れていますが…現代のお笑いは?

濱口「街で奇天烈なことをしている人を見かけて、じゃあそれを取り入れて舞台でやってみようというのは同じですね。僕ら舞台を創る側の人間は街でやるほうじゃないんですよ。そういう意味では江戸時代に歌舞伎を創っていた人たちは“傾き者”と呼ばれる人たちの面白さを客観的に見ていたんでしょうね。渋谷のコギャルを舞台でやるイメージに近いですよね」

富樫「なるほど。じゃあ今日観た『廓文章』(※4)の伊左衛門とかも?」

濱口「ええとこのボンが主人公でダメでっていうのは大阪の芝居に多いんですよ。藤山寛美さんとか。だからあの話は江戸時代の“あるあるネタ”だったんじゃないでしょうか」

富樫「あれが!」

濱口「江戸時代の人が観たら『おるおるおる!こういうやつ!』というキャラだったんじゃないかな。大阪の芸人が大阪のおばちゃんを演じたりするような。今で言ったらアキバ系の人。眼鏡かけてリュックしょってっていうのを舞台で真似していじるでしょ?江戸時代の歌舞伎って、傾き者と呼ばれる人とか、大店のボンとかをいじってたんでしょうね。『おるわー。女に入れあげて勘当されるやつ』って。そういう目線で観るとお笑いと一緒」

富樫「そうかあ。いじるって…上方の場合特に、とても納得がいきます」

濱口「今日歌舞伎を観て思ったのは、僕らものを創る側は“半歩先”を見なければならないということです。突拍子もないことをやっても受け入れられない。『こういう人おもしろいやろ!』ということを丁度おもしろいくらいにやらなければならない。江戸時代に歌舞伎を創っていた人たちはすごくアンテナを張っていたんだと思います。まともな感覚を持っていないと、おもしろいものを創るのは無理なんです。そういう意味で、歌舞伎もお笑いも根っこは一緒なんだなというのが発見でした」

 歌舞伎が400年間、現役で上演され共感されるのは日本人の変わらぬ心や感情が描かれているからだと言われます。ところが歴史大河を紋切り型に描いた“お勉強”ではなく、時にはクスリと笑わせる活き活きとした感覚は『おるやろ?こんなやつ』というリアルな観察眼ゆえに宿っているのだろうと濱口さんとのお話を通して考えました。

 『こいつおもろいやろ?』と客席の私たちに長い時を経てネタを投げかけてくれる江戸の作者や役者たちのことを想像し芝居を観れば、きっと新たな発見があるに違いありません。またひとつ感客道を会得いたしました。

 

プロフィール

濱口優

 1990年、有野晋哉とよゐこ結成。現在、『めちゃ²イケてるッ!』(フジテレビ系)、『いきなり黄金伝説!』『大胆MAP』(テレビ朝日系)、『よゐこ部』(毎日放送)、『イツザイ』『ディズニータイム』(テレビ東京系)他に出演中。毎年恒例の小学生を対象にしたイベント「よゐこの夏休みこども祭り」を今年も開催。今年は大阪での公演も決定し、内容も大きくリニューアル!今回はまさる少年こと濱口優がなんと桃太郎に!!

<よゐこの夏休みこども祭り?桃太郎VS鬼in2008 >
[会場・日程]

○東京公演/会場:新宿紀伊國屋サザンシアター
日程:2008年8月9日(土) 開場13:00 開演14:00
10日(日) 開場12:00 開演13:00

○大阪公演/会場:難波・ワッハ上方
日程:2008年8月17日(日) 1回目・・・開場11:00 開演12:00
2回目・・・開場15:00 開演16:00

[出演]
よゐこ(濱口優・有野晋哉)、安田大サーカス(団長・クロちゃん・HIRO)、TKO(木下隆行・木本武宏)、他

[チケット]
7月13日(日)よりチケットぴあにて発売予定
小学館学年誌「小学一年生?六年生」7月号にて、読者先行予約を開催

※チケット購入に関しての注意事項
チケットは大人とこども(4歳?12歳)のセットでのみ購入可能です。必ずおとな(保護者)の方が代表者となって申し込みをしてください。
4歳以上?小学生(12歳以下)を対象としたライヴのため、おとなのみ(中学生以上のおとなのみ・おとなと3歳以下のこどもなど)の応募も無効です。
なお、13歳以上はおとな料金になります。
 

富樫佳織

放送作家。NHKで歌舞伎中継などの番組ディレクターを経て、放送作家に。

「世界一受けたい授業」「世界ふしぎ発見!」「世界遺産」などを手がける。中村勘三郎襲名を追ったドキュメンタリーの構成など、歌舞伎に関する番組も多数担当。

富樫佳織の感客道

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