歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



 

謎解きしていく面白さ

 幕間は歌舞伎座内のお土産売り場を物色。甘党の濱口さんの心をとらえたのは1階売店で実演販売している小豆にアイスをのせたお菓子と、2階和菓子売り場のかりんとう。いざ、甘いものをゲットして次の幕に臨みます。昼食をとった後におやつを食べながら芝居を観る。これぞ至福の時間です。

富樫「歌舞伎って観ているとたまに荒唐無稽で『え?』となることがある。なのに観ているとハマってしまうから不思議なんですよね」」

濱口「変わらずやっていくことの強さなんでしょうね。例えば今日観た芝居で、熊谷と敦盛が鎧を脱いで整える場面がたっぷりあったでしょ?きっとこの部分は今なら演出家に『じゃあ、ここはカット!はい、ここも』とか言われるんやろうなーって思いながら観てたんですよ。刀に紐をクルクル巻くだけで数分使ってましたよね?」

富樫「してました(笑)」

濱口「『そこ、もう紐なしでいこう!』となるところを、ずーっと片付けてる。でも、それだけでみせられるわけですよ。お客さんはじーっと観ちゃうわけですから。そこがすごい」

富樫「ひとつひとつの動きや台詞だけじゃなくて、歌舞伎の上演形態も不思議。今日観た『組打』だけじゃ初めて観た人は全て分かりませんよね?あの後に『熊谷陣屋』という有名な場面があるのですが、そこに繋げないで成立しているすごさが」

濱口「でもね。僕が今日歌舞伎を観て思ったのはまさに“自分で想像する面白さ”があるなってことなんですよ。この人誰なんやろう?とか、どういうことになってるんやろう?とか。最近、映画でもパート1、2、3と続くのが多いでしょ。しかも『1を観てなくても2が観られます』という作品まであるじゃないですか」

富樫「じゃあ1は何だったの…って思いますよね」

濱口「僕は思い切って2から観る人は観られなくてもいいんじゃないかと思うんですよ。新しいお客さんを取り込むのもすごく大事だけど、分からないもんは分からんでいいよ!っていう突っぱねも必要だと思うんですよね。そうすれば分からないものを分かろうとする面白さが生まれるじゃないですか」

富樫「気になって調べるうちにハマったりして」

濱口「あまり突っぱねるのもあかんのやろうけど、歌舞伎はもう400年も続いてるから、もう合わさないよ君たちに、っていう潔さがあるのかもしれないですね(笑)」

富樫「もう、どっから合わせていいのかも分からないくらい長くやってますもんね(笑)」

富樫佳織の感客道

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