歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



衝撃を受けた表現が、歌舞伎に全部あったという衝撃

 開演前や幕間。副田さんは劇場の中をぶらりと巡ると楽しそうに客席に戻っていらっしゃいました。

副田「お土産屋さんやお菓子屋さんがたくさん並んで賑わっている雰囲気がいいよね。きっと江戸時代の人は舞台鑑賞!と身構えるより『芝居観にいって、役者グッズを買おう!』とか『茶屋であれを食べよう!』とか、芝居見物というイベントそのものを楽しんでいたんでしょうね」

 歌舞伎の面白さにはまったのは、副田さんよりも奥様のほうが先だったそうです。劇場に通う奥様から何度も歌舞伎の面白さを聞いていた副田さんですが…すぐ行ってみよう、とはならなかったのだとか。

副田「日本で生まれ育っていると、歌舞伎というもの自体は観たことがなくても知っているんです。テレビで見たり写真で見たりして。多くの日本人はその『歌舞伎は知っている』という気持ちがあるだけに、強く背中を押されないところがあるよね」

富樫「ご覧になるようになって、いかがですか?」

副田「自分が“知っている”と思った世界とは違ってましたね(笑)。すごく新しくて奇抜な表現もあれば、ストレートな心情表現もあってね。なんでもっと早く観なかったんだろうと(笑)」

富樫「実際に観ると、固定観念を崩され続けるのがたまらないんですよね(笑)」

副田「僕は職業柄、ずっと海外の音楽や映画、デザインを追いかけて影響を受けてきたんですよ。なのに歌舞伎を観たら、これまで「すごい」と思った表現が全部ここにあった(笑)。それがもう大きな発見ですよね。例えばニューヨークの自然史博物館に剥製の展示があるでしょ」

富樫「後ろが歌舞伎の大道具みたいになってる(笑)」

副田「そうそう!山脈を描いた書割があって手前に立体の石や木を置いて、そこに熊や猿の剥製が飾られているあの展示。初めて見た時に、ものすごい衝撃を受けたんです。でもね、歌舞伎を観たらそれよりスケールが大きくてリアルな舞台装置があるんだもの。自分が衝撃を受けたものを実は日本人がすでに作っていて、ものすごく身近にあったということに、驚かされた。だからね、ものを作る人は歌舞伎を観たほうがいいと思いますよ。宣伝じゃなくて、本当に(笑)」

 

サントリーオールドウイスキー
引退したばかりのKONISHIKIをウイスキーのボトルに見立てるという大胆なアイデアから生み出された印象的な広告。チャーミングなキャラクターを活かしたデザインで、ウイスキーの「古い」「オヤジっぽい」というイメージを一新した。

富樫佳織の感客道

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