歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



   

日本語に、意味と感覚を込めるデザイン

 「松竹歌舞伎検定」のロゴは、漢字5文字を大胆にデザインしたものです。新しい、ポップな感覚と、歌舞伎の骨太さや歴史感を想像させる…見た瞬間、このロゴ自体に歌舞伎を感じました。でも、歌舞伎をデザインするのは難しかったのではないでしょうか?

副田「難しかったですよ。歌舞伎自体が長い時間の中でものすごく研ぎすまされてきた表現なわけですから。漢字をデザインするのもまた難しいと分かっていますからね」

 アートディレクター、特に広告のアートディレクターは、商品の特性や企業のメッセージに世界観を与え伝える職業です。副田さんは、文字でその世界観を創るデザインを追求し続けてきました。

副田「若い頃、仲畑貴志さんというコピーライターに出会ったのが大きいんです。彼が生み出す言葉をどうデザインに落とし込むか、どうコミュニケーションにするのかをずっとやってきたから。強い言葉は、写真やイラストをつけたら死んでしまうこともある。だから、誰もやらなかった“文字だけの広告”も作りました」

 美しい写真や英文をデザインしたロゴタイプが一番“おしゃれ”だった時代。日本の文字をデザインするという発想は、大きな挑戦だったと副田さんは言います。

副田「本当に日本語は難しいんです。崩すと読めなくなってしまうし、そのままではロゴにならない。でも、日本語のデザインは日本人にしかできない。そこにアルファベットとは違う醍醐味があるんですよ」

富樫「歌舞伎をデザインすることで言うと、隈取りとか衣裳とか、記号化できるものが溢れていますよね。この文字のロゴはいろいろなものを全部含んでいると感じます」

副田「そう感じていただけたら、嬉しいですよね。歌舞伎には勘亭流という独特の文字もありますから、さらに難しいことをしましたよね(笑)。歌舞伎が持っている歴史、現代の僕たちが観てもハっとする新しさ、いろいろな要素を表現するにはあえてシンプルに文字をデザインするのが一番いいと考えたんです」

富樫「うまく表現できないのですが、本当に「歌舞伎だな!」と思うロゴですよね。傾くという感じや、劇場にあふれる光…いろいろなものを想像します。まさに共感、です」

副田「歌舞伎には、僕たちが日本人であることを気づかせてくれるものが詰まっていると思います。美意識や、「傾く」精神に象徴される反骨精神とか。普段は気づかないけど僕たちの中に確かに内在しているものを確認させてくれる。深い共感が生まれるメディア、芸能なのだと思います」

 400年前に作られた芝居も現在の広告も同じ。感情を揺さぶられる体験をしたとき人は、忘れていた大切なものを取り戻す。感客道、またひとつ会得いたしました。

 

プロフィール

副田高行

 1950年福岡生まれ、東京育ち。アートディレクターとして『JR九州』『西武百貨店』『サントリー ウイスキー KONISHIKIキャンペーン』『SHARP AQUOSシリーズ』『トヨタ エコプロジェクト』『全日空NIPPON2』といった強い印象を残す広告を制作し続ける。朝日広告賞、毎日広告デザイン賞など受賞多数。

 

富樫佳織

放送作家。NHKで歌舞伎中継などの番組ディレクターを経て、放送作家に。

「世界一受けたい授業」「世界ふしぎ発見!」「世界遺産」などを手がける。中村勘三郎襲名を追ったドキュメンタリーの構成など、歌舞伎に関する番組も多数担当。

富樫佳織の感客道

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