歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



トヨタ エコプロジェクト
地球規模の問題となっている環境のために、クルマは何ができるのかを分かりやすく社会にメッセージした広告キャンペーン。堅苦しいお勉強ではなく、広告を見る人ひとりひとりにつながるメッセージを、車のかたちをした葉っぱのデザインが象徴している。

全日空「ニューヨークへ、行こう。」

 

間をデザインする、日本人の美意識

 アートディレクターである副田さんは、歌舞伎の舞台スケールや大道具のデザインをどのようにご覧になるのでしょうか。

副田「舞台の横幅がものすごく広い。独特ですよね。舞台に対して客席の奥行きが狭いのも面白いね」

富樫「舞台のスケールが象徴していると思うのですが、歌舞伎って『余白』がたくさんありますよね。こんな広い舞台に俳優がふたりしかいないのに、全体は整っている感じがする。日本独特の感覚なのでしょうか」

副田「『余白』イコール『間』と言えると思います。空間の間はもちろん、台詞の間だったり、音の間だったり。その『間』に美意識があるんですよ。『空(くう)』とも言えるかな、空(から)の部分にも意味がきちんとあるんですよね」

富樫「意味があるから、何もないけれど埋まっている感覚を受けるんですね」

副田「間をつくる、というのは日本人特有の美意識なのかもしれませんね。京都の庭もそうです。余白にちゃんと意味がある。デザインもまさにそうなんです。いいデザイナーは、余白を作るのが上手いんですよ。間が上手い」

富樫「歌舞伎の中にあるもので言うと、黒衣という存在も『空』ですよね。あるものをないものとして見るお約束も、日本的な気がします…」

副田「黒衣という発想はすごいですよね。デザインの話をすると、僕はデザインを感じさせないデザインが最高だと思うんです。黒衣の存在のようなデザイン。『いいデザインですね』と言われているうちは、まだまだ(笑)。『あ、いいな』と思ってもらうくらいが最高。今日の芝居、『高野聖』も舞台装置をそういう目線で観ていると実によくできていますよね」

富樫佳織の感客道

バックナンバー